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我が Key Play ~藤田憲一の場合~


Friday, December 14, 2001
 

"『騙す奴ほど騙される』"


藤田憲一
 昔、俺が麻雀の師匠に言われた言葉だ。
 麻雀におけるこの言葉の意味はともかく、マジックにおいても相手を「騙す」というファクターは非常に重要だ。
 ま、要は、駆け引きのテクニックって奴は、熟練者との対戦・膠着した場といった条件でより真価を発揮する、って事だな。
 もちろん「カウンター ? 持ってないよ…」なんて口にして、実は持ってた、なんてのは論外。そりゃただの口三味線。

 で、今日はそんな「騙し」の話をひとつ。

" long long time ago... "

 1997 年・・・。こりゃまたずいぶん昔ですなぁ。この年のゴールデンウィークに、日本ではじめての国際大会「グランプリ東京」が開かれた。フォーマットは「ミラージュ・ヴィジョンズ」のリミテッド。確かメチャメチャ人数多くて、予選が二日間に分けて行なわれたんだよなあ。しかも両日とも参加者 500 人くらいいたような気がするしなぁ。

 当時「あと一歩でプロツアー参加権ゲットな所で負ける」病に冒されていた俺は頑張りました、ええ。8 人も権利貰えるって話だったし。

 結局予選を負け無しで突破し、病を克服。決勝のロチェスタードラフトでも準々決勝で射場本正巳、準決勝でそれまで勝てなかった鶴田導師を下して決勝に進出。

 そして最後の対戦相手、当時のトップデュエリスト塚本俊樹と対決した時の話だ。

U/W Defensive
by Ken'ichi Fujita

Main DeckSideboard
9 Island
7 Plains

1 Sea Scryer 1 Teremko Griffin 1 Knight of the Mists 2 Azimaet Drake 1 Man-o'-War 1 Rainbow Efreet 1 Floodgate 1 Hazerider Drake 1 Freewind Falcon 1 Ovinomancer 1 Zhalfirin Knight 3 Ekundu Griffin 1 Crystal Golem
1 Boomerang
1 Cloak of Invisibility
1 Mystic Veil
1 Pacifism
1 Favorable Destiny
1 Sun Clasp
1 Parapet
1 Warrior's Honor

 俺のデッキはご覧の通りの白青デッキ。飛行 9 体が主力、地上・除去はやや細いが Floodgate を開けさえすればなんとかなる。

 対する塚本のデッキは、 Kaervek's TorchDark BanishingIncinerate といった高性能除去を有する赤黒のビートダウン。  この環境では赤黒が最強というのが当時の定説だった。CoP 無かったしね。

"1-0 で迎えた二本目"

 どうやってかは良く覚えてないが、とにかく一本目をあっさり俺が勝利。

 んで二本目。
 序盤、土地のセット順ミス→ Coercion で島を落とされて(人為的)事故発生。
 土地が平地* 3 で止まり、Suq'Ata Lancer とかにガシガシ削られて大ピンチに陥った。
 やっとのことで島 4 枚から FloodgateMan-o'-War で戻して塚本のクリーチャーを 3 体倒し、なんとか一息ついた状態から話が始まる(前振り長いな・・・)。

(場の状況)

塚本俊樹サイド

ライフ 20  
手札 4 枚くらい
土地 8 枚

クリーチャー:Patagia Golem

俺    

ライフ 7
手札 2 枚 (Mystic VeilEkundu Griffin)
土地 8 枚

クリーチャー:  
2 Ekundu Griffin
1 Man-o'-War
1 Floodgate
1 Sea Scryer

" Time Limit "

 といっても制限時間ではない。いくら塚本が長考しようが、決勝は時間無制限だしね。向こうも Floodgate 炸裂以降大した引きはしていないようだが、 Patagia Golem が頑張っていてこちらのクリーチャーは全く通らない。
 それを突破できるような状況を作れるカードもデッキにそれほど入っていない。

 ま、普段なら Floodgate が睨みをきかしているからゆっくりチャンスを待てばいいんだけど、 Kaervek's Torch があちらのデッキに入っているのが判っているのでのんびりしているわけにもいかない訳だ。  序盤のダメージのおかげで、引かれたら本体がこんがり逝ってしまう。

 つまり「塚本に Kaervek's Torch を引かれるまでに決着をつけなければならない」というターン制限が俺には発生しており、俺は現有戦力で行動を開始しなければならなかった。

 が、何しろ序盤のミスが酷すぎる。とっくに勝っててもおかしくない展開なのに、わざわざ自分から相手に塩を送りながらやっているようなもんだ。

#余談だけど、「流れ」ってあるよね。
#世の中結構デジタルな人が多いけど、そんなんで割りきれるほど
#MTGは簡単じゃないと思う。
#論理的帰結による「正着」は必ずしも「正解」な訳じゃない。
#直感を信じないで後悔するよりも、信じて後悔した方がいいと俺は思う。

 ところで、ロチェスタードラフトは「取得したカードは公開情報」という特徴がある。俺のスペル欄を見てもらえば分かるが、インスタントで Patagia Golem をどうこうする可能性があるスペルは Warrior's Honor だけだ。 あとはせいぜい Boomerang くらいだけど、これは攻撃前に打つ必要がある。Pacifism なんかがあれば全面的に解決するんだが、そんなもんを都合よく引けるほどこちらの流れにはなっていない。

”状況分析”

 とにかく動く事は決まった。後はどう動くか、だ。
 とりあえずこの時点で俺が取りうる行動を考えてみよう。

1. Mystic Veil をキャスト
2. Ekundu Griffin をキャスト
3. X 体で攻撃
4.何もしないでターン終了

 まず 1 は論外。ていうか、これカウンターだし。
 4 も悪くはない。良くもないけど。
 2 はまあ普通。平常時のプレイングならキャストしてエンド、が一番あり得る。
 3 は…攻撃可能クリーチャーは四体。まあ、うち三体通ったとして 5 点抜けて
 一体が一方的に殺される。
 期待値的には 5-5-3-1 と 14 点通るが、その後がまったく続かない。
 除去される可能性も考えるとこれも無いだろう。
 塚本のハンドもおそらくは Floodgate のせいで出しかねているクリーチャーだと言う事も考えられる。もし俺が、アタック→キャスト→エンドという流れで進めればおそらく相打ち、あるいは抑止力の為にクリーチャーを出してくると思われ、期待値通りのダメージは通らないだろう。

”戦士の誉れ”

 そこで今回の主役がこのカードである。

 え?引いたのかって?いや、引いてないよ(笑)。
 …引いてたらキープレイもへったくれもないじゃん。

・このままずるずるターンが進むといずれ死ぬ可能性が高い
・なので、可及的速やかに現状を打開する必要がある
・それが可能なインスタントは Warrior's Honor のみ
・でも持ってない(;´Д`)

 以上から導き出される結論。

Warrior's Honor を持ってるフリをして、塚本に持ってると思い込ませる』

 これしかなかった訳だね。

 もちろん不安要素は沢山あった。
 ブラフを見破られる可能性、見破られなくても向こうも賭けにでてブロックされる可能性、実はもう Kaervek's Torch 持たれてて、殴ったことによって追い詰められて撃たれる可能性、塚本が Warrior's Honor のピックを覚えていない可能性(笑)…。
 でもまあ、一本先取してるから負けてもいいや!くらいの気持ちだったしねぇ。

”作戦内容”

 といっても別にたいした事はしないんだけど。
 まず俺が Warrior's Honor を持っていると仮定して行動するならば、

Ekundu Griffin * 2 と Man-o'-War * 1 で攻撃

 これしかない。これ以外のどんな行動も塚本側から見て不自然である。Sea Scryer まで突っ込めばバンザイアタックと取られかねないし、どれか一体を残してもやはり不自然だし。

 次にタイミング。
 実は、この結論に至るまでに考え始めてからちょっと時間がかかりすぎちゃってるんだよね。何がまずいのかって?これも第三者から見た場合の話だけど、もし俺が Warrior's Honor を引いているのなら、少考してアタックしてるのが自然なんだよね。そんなに考え込む必要はないってことなのよ。まあ、これも今から思えば心配しすぎのような気もするけどね(ドラマや小説の殺人犯のようだ(笑))。
 ま、という訳で「お芝居」は次ターン」から開始ということで俺的に決定。一巡廻してリーチみたいなものだ(謎)。
 …次のターンになんか引かないかなあ・・・などと甘い期待をしていたのも事実だが。

 結局そのターンは何もキャストしないでエンド。塚本も特に何もアクションを起こさないで終了。いよいよバクチの開始だ。

”状況開始!”


'Japanese Legend' 塚本俊樹 
 次ターン、俺はドローしたカードを見て一瞬動きを止めた。塚本が意識をしてこちらを見ているかどうかまでは判らないが、視界には入っているだろう。最後の瞬間への伏線は、今この時に張られ始めたのだ。実際に引いたカードはもう忘れてしまったが、少なくとも状況を打開する物ではなかったはずだ。  俺は、これから先そのカードを Warrior's Honor として扱わねばならないのだ。

 引いたカードを手の中に入れてちょっと考え込むフリをする。場の状況を見る。ライフを見る。相手の手札を確認する…。こんな細かいアクションをはさんだ後、俺は攻撃を宣言した。もちろん、上で述べた 3 体で。

 そこからはまさに針のムシロに座っている気分だった。大勢のギャラリーに囲まれながら、塚本のブロッカー指定を待つ…。実際にも相当時間がかかっていたのだろうが、俺にはその何倍もの時間に感じられた。

 そして・・・長い沈黙の末、塚本が発したその言葉に俺は勝利を確信した。

塚本「・・・引いたの・・・? +1 / +1 …。」

”優勝!そして・・・”

 結局、塚本は攻撃を通し、俺はクリーチャーを召喚して終了。その次のターンのアタックもブロックされずに通り、その次のターン、俺のアタック宣言とともに塚本は投了した。
 これが、いわゆる「とぼけてアタック」の全容である。

 この時の様子と、フューチャーマッチテーブルでの姿勢(本人的には、ただテーブルが狭くて足が入らず、やむを得ず半身になっていただけなのだが)から「悪人」などというありがたくないレッテルを、石田格や真木孝一郎に貼られてしまったり・・・その後トロフィー割ってしまったり・・・と、俺のマジック史の中でもかなり思い出深い大会となったグランプリ東京はこうして幕を閉じた。

 そして時は流れてつい先日、PTQサンディエゴ東京二次に出ていたんだけど、準決勝で原田洋のプレイングにこれ以上ないほど見事に引っかかって、デッキが強いにもかかわらず負けてしまった。隣で見ていた森雅也に「なんであんなのに引っかかんの ? ありえないっしょ。」などといわれるほど見事に。

 なるほど。どうやら『騙す奴ほど騙される』というのは本当らしい。



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