2005年度受賞の津村 健志(広島)と2006年度受賞の八十岡 翔太(神奈川)。チーム戦においてトリオを組んだ仲間たちが次々と栄光のタイトルを獲得していったことが、23歳の若者の心に火をつけた。
斎藤 「この2007年は、最初から自分がPOY(※Player of the Year)になるんだって、シーズンがはじまる前から決めていました。一緒にプロツアーで戦った仲間にできて、自分にできないことはないだろうって」
世界の頂点を狙うと、たしかに斎藤は公言し続けてきた。「最初からPOY宣言って、ちょっとまだ気が早いんじゃないか」と、笑い話にされることも少なくなかったが、彼は最初から真剣そのものだった。
斎藤 「追い込まれないと本気を出せないタイプなんですよ。だから、大口叩いといて、カッコ悪いとこはみせられないよなっていう風に自分で自分にプレッシャーをかけるという意味も大きかったですね。でも、本当に、自分がどこまでできるのか、試してみたかったんです」
津村 健志、八十岡 翔太、中村 修平、斎藤 友晴の四名はこの一年間に行われたすべてのグランプリとプロツアーに遠征してきた。プライベートを含んだほとんどすべての時間を、彼らはマジック:ザ・ギャザリングの競技者として捧げてきたのだ。彼らの世界をめぐるライフスタイルについては、中村 修平による旅行記を是非ご一読いただきたい。
マジックプレイヤー的地球の歩き方
つねに世界をとびまわる日々。
苦しい戦いが続いたというこの濃密な一年を、斎藤は複雑な表情で振り返る。
■グランプリ/Grandprix
斎藤 「グランプリではいろいろ思い出がありますけど、やっぱりブリスベーンとストラスブールが特別でしょうね」
GPストラスブルグ
斎藤 友晴はストラスブールの地で見事に優勝を飾っている。
斎藤 「単純に海外のグランプリで勝てたという嬉しさもそうですけど、ここでPOYレースの単独首位にたって、海外の人たちにようやく斎藤 友晴という存在をきちんと認識してもらえるようになったのをすごい感じましたから」
たしかに、昨年と一昨年のPOYが常に同行していたわけだから、遠征先で斎藤が「日本人の一人」という大雑把な括りで扱われるということも少なからずあったのだろう。その評価を自力で変えさせたイベントがGPストラスブールだったのだ。
斎藤 「いろいろ言われているかもしれないですけれど、ブリスベーンに行って本当によかった。先代と先々代のPOYである津村とヤソ(八十岡)から学んだんですが、少しでも多くのグランプリに参加して一点でも多くプロポイントを取らないと」
いろいろ言われているかも、と斎藤が示唆したのは、彼が「オールスターゲーム」であるマジック・インビテーショナルを欠場してGPブリスベーンに参戦しているということである。旅の仲間である八十岡、津村、中村の三人がドイツのインビテーショナルをお祭り気分で満喫しているその頃、斎藤は遠くオーストラリアの地で真剣勝負を繰り広げていた。
Kai Budde時代が終焉を迎えて以来、POYレースというのは世界選手権まで結果がわからない、それこそプロポイント数点差での決着があたりまえというデッドヒートとなるのが恒例化していた。そんな中で「今年は絶対POYを獲得する」と公言していた斎藤としては、オールスターゲーム出場といえども見送らざるを得なかったのだ。
さらに、斎藤 友晴は最新セット・ローウィンのリミテッドのグランプリで必ず1点以上のプロポイントを持ち帰るという堅実な成績を残しているわけだが、これについてブリスベーンでの経験の有意義さを中村 修平が語ってくれた。
中村 「僕たちがエッセン(※インビテーショナル会場)にいる間に友晴がブリスベーンに参加していたというのは、その後のローウィン・リミテッド戦線を考える上で大きなアドバンテージになっていたと思います。はっきり言って、彼と僕の間ではなかなか埋まらない環境理解度の差があるのを、肌で感じましたから...」
■プロツアー/Pro Tour
プロツアーに関しては語るべきトピックが多すぎるということなので、すべてのイベントを順番に振り返ってもらおう。
プロツアー・ジュネーブ
斎藤 「自分のマリガンミスで負けてあっという間にベストエイトの可能性がなくなってっていう、これまでの自分ならボロボロに崩れる展開でした。でも、POYになるんだから少しでも挽回しようって思って戦いました。ジュネーブでは悪いなら悪いなりに17位に入れたので、これは嬉しかったです。POYになるぞって決めた覚悟が、最初から良い風に作用したんじゃないかな」
プロツアー横浜
斎藤 「横浜は僕というプレイヤーをよくあらわしていたイベントだと思います。準決勝でミタムー(※三田村 和弥)に負けちゃったんですが、変異デッキははっきりいってメタ外だと思って、あまり対戦を練習できてなかったんです。今になって思うと、ちゃんと戦い方がわかっていたらこっちが三連勝できててもおかしくないですね」
彼は自分のプレイを語る際に、「素質」だの「センス」だのといった華やかな言葉を決して使わない。自分を天才ではなく秀才だと言い切って、ひたむきに努力して積み上げていくのが斎藤のスタイルだ。
プロツアー・サンディエゴ
斎藤 「サンディエゴはスリヴァー決め打ちのチームが優勝しましたよね。でも、あれはとてもリスクの大きなプランで、二つの意味で運の要素をクリアしないといけなかったんですよね。まず、スリヴァーの出(※パックからの出現率)がよくないといけない。次に、ブン回らないといけない(苦笑) スリヴァーはカード1枚1枚は決して強くないので、うまくまわらないときは逆転不可能ですからね。でも、ハイリスクでハイリターンなので、それを承知でやったルーキーが優勝したんだから、立派です。なんにしても、僕たちは10位でしたけど...最高のパートナーだったんで、それくらいは当然です」
双頭巨人戦での斎藤の相棒は、長らく苦楽をともにしてきた鍛冶 友浩(斎藤)。その鍛冶が今大会かぎりでの引退を表明している点については、斎藤は多くを語らない。
斎藤 「ただただ感謝してます」
プロツアー・ヴァレンシア
洪水で初日が中止となり、二日目に10回戦を行うかたちの変則スケジュールとなったヴァレンシア。この洪水は斎藤にとっては災いしたようだ。
斎藤 「ひさびさの初日落ちです。洪水の間の情報交換と調整で、まわりのデッキがみるみる強くなっていったのが...印象的です。マジメに調整していって手ごたえもあったんですけど、洪水の間にメタゲームから何からだいぶかわっちゃったんですよね」
■2008シーズン展望
最後に、さっそく来週から開幕する2008シーズンにむけて、意気込みを聞いてみた。
斎藤 「受賞の嬉しさもあるにはありますけど、結局、最後は自分で決めたというより、ライバルのWafo-TapaとLevyが世界選手権で失速したからっていうのもありましたよね。だから、来年も世界をまわって、今度は世界選手権がはじまる段階でPOY受賞が決まっているのを目指します!」
斎藤はすでにスイッチを切り替え、ドイツのシュトゥットガルトで行われるグランプリを視野に入れている。
斎藤 「...ちょっとビッグマウスすぎましたかね(苦笑) でも、プレッシャーかかってないと僕はだめなので」