Sunday, Dec 3: 12:44 p.m. - 準々決勝 : Nick Lovett(ウェールズ) vs. 森 勝洋(東京)
by Keita Mori
マジック:ザ・ギャザリング十余年の歴史で誰一人としてなしえていない大記録、それがディフェンディングチャンピオンによる世界タイトルの防衛である。本来ならそれだけでも「空前の」と形容しても差し支えないのだが、加えて今大会の森 勝洋の双肩には個人団体完全制覇というもうひとつの記録がかかっている。これも、2000年度世界選手権で当事のアメリカ王者だった「ジョニーマジック」Jon Finkelが樹立した偉大なる金字塔である。
そんな森 勝洋の前に立ちはだかるのが、ウェールズ代表選手Nick Lovett。一般的に《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》や《なだれ乗り/Avalanche Riders》が投入されていることが多い4マナ域に、《ワイルドファイアの密使/Wildfire Emissary》を採用した赤白デッキをプレイしているという新鋭だ。
Nick Lovett : ボロス・デック・ウィンズ(BDW)
森 勝洋 : 青白ウルザトロン
Game 1
ダイスロールに勝利したLovettは開幕ターンに《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》、2ターン目に《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》という快調なスタートでビートを刻みはじめる。
後手の森は2ターン目のエンドステップに《熟慮/Think Twice》を打つファーストアクションから《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》を引き当て、4ターン目に《神の怒り/Wrath of God》をプレイするという悪くない立ち上がりを迎えたようだった。
しかしながら、一度は盤面をリセットされてしまったLovettも後続としてただちに《ワイルドファイアの密使/Wildfire Emissary》を送り出し、ダメージレースを継続する。森もゲームの行方をコントロールできるカードをさがしに《強迫的な研究/Compulsive Research》を連打してマナを整備していくが、目の前に迫る脅威を駆逐する次の一枚を見出せない。
淡々とアタックを繰り返したLovettは、《火山の鎚/Volcanic Hammer》でダメージを追加し、さらに《ロノムの一角獣/Ronom Unicorn》を召喚して盤上のダメージクロックを拡大しにかかる。まもなく、土地、土地、印鑑、印鑑、土地、土地という具合のマナフラッドを起こしてしまった森は投了を余儀なくされた。
Nick Lovett 1-0 森 勝洋
サイドボーディングの最中も咳の止まらない森をLovettが気遣う。
12時間を越えるフライトの最中にひどい風邪をもらってしまったという森は、この5日間を通じてずっと体調不良に悩まされている。特に初日は高熱と戦いながらの試合であったようで、集中が途切れると足元がおぼつかないほどの有様であった。その後少しずつ快方に向かったかに見えた病状だが、正直なところ今朝になって悪化してしまっている。
おそらく熱にうなされて集中力が途切れそうな自分に喝をいれる意味で、時折、森は己の頬をピシャリピシャリと打っていた。
Game 2
先手を得たディフェンディングチャンピオンは、2体の《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》に対して4ターン目にキッチリ《神の怒り/Wrath of God》で対応する。しっかりと印鑑でマナを伸ばし、後続をさらに《神の怒り》でなぎ払うという快調な動きだ。
それでも、削ぎ落としたライフを最後の火力で削り取るというゲームプランの残されているボロス・デック・ウィンズだが、サイドボードから投入した《赤の防御円/Circle of Protection: Red》により、青白トロンがその目論見を打ち破った。
ゲームの流れを掌握した森 勝洋。彼は続く《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》を《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》の「瞬速」によるブロックで葬り、Lovettは火力2枚がかりでこれを何とか除去するという流れだ。そして、ウルザトロンこそ揃わないものの膨大なマナ域へと到達した森が《ウルザの工廠/Urza's Factory》から2/2トークンを生み出しはじめる。
Lovettの最後の足掻きを3枚目の《神の怒り/Wrath of God》が一蹴し、ライフを《信仰の足枷/Faith's Fetters》で安全圏へと引き上げるという盤石の状態から、《トリスケラバス/Triskelavus》が登場。これがゲームを決めた。
Nick Lovett 1-1 森 勝洋
Game 3
《ライオン》、続けて《ライオン》と《投槍兵》。激しい開幕攻勢をかけてくるLovettに対し、3ゲーム続けて森は「2ターン目に印鑑を置けない」という芳しくない立ち上がりを迎えることになる。
そのデッキ構成上、無色マナを生み出す土地を多めに投入せざるを得ないウルザトロンデッキゆえに、マナ加速と色マナ供給という二つの需要を満たしてくれる「印鑑」はとても重要だ。特に、早いターンにダブルシンボルを、主に《神の怒り/Wrath of God》を要求される展開では「印鑑」が大きな役割を果たすことになる。
この、「印鑑を置けない」というのはこのゲームで森が抱えてしまった問題を象徴する出来事だった。色マナが揃わないことには《神の怒り/Wrath of God》を打てず、盤面に登場した1マナクリーチャーたちに好き勝手やられてしまうのだ。
そうこうするうちに、残りライフはわずか4点。ここでペインランドを使用して《ライオン》のうち1体に《信仰の足枷/Faith's Fetters》をプレイした森に対して、狙い済ませた《稲妻のらせん/Lightning Helix》が飛んでくる。なんとかこれを《呪文嵌め/Spell Snare》する森だったが、後続に《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》を呼ばれてしまう。
痛々しいマナベースながらも白マナを複数供給できるようになった森だが、結局《神の怒り/Wrath of God》を引けず、タップアウトで《トリスケラバス/Triskelavus》を召喚してターンを返すことになる。ここで火力を持たれていたら、どのみち負けだ。
そして、Nick Lovettは手札から《黒焦げ/Char》を公開する。
Nick Lovett 2-1 森 勝洋
森から青白ウルザトロンをシェアされている小倉 陵(愛知)が見事な3タテで準々決勝を勝利したという知らせがもたらされる。森がこの逆境を乗り越えられた場合、準決勝では二人の日本人によるミラーマッチが繰り広げられることになる。
Game 4
第4ゲームを迎えた森だが、やはり2ターン目に印鑑をおくことは出来なかった。対するLovettが《サバンナ・ライオン》から《アイケイシアの投槍兵》に続けるという好調な滑り出しで、森は《差し戻し/Remand》でキャントリップしてから《強迫的な研究/Compulsive Research》をプレイするという動きを選択する。
すると、3ターン目、4ターン目、とLovettはサイドインしてきた《石の雨/Stone Rain》で的確に《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》と《神聖なる泉/Hallowed Fountain》とを破壊しながらダメージクロックをレッドゾーンに送り込んでくる。脅威を展開してから対戦相手の動きを封じ込めにかかるという、いわゆるクロック・パーミッション的な動きでコントロールデッキに襲い掛かった。
ライフを削られながらもなんとか《強迫的な研究/Compulsive Research》を連打して土地を引き当て、印鑑を置いて追いすがる森。《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》と《火山の鎚/Volcanic Hammer》を《呪文嵌め/Spell Snare》でさばいて未来を模索する。
第7ターン目を迎えた森は残りライフわずか6点。このゲーム4枚目となる《強迫的な研究/Compulsive Research》の使用から2枚目の《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》を置いてタップアウトとした。どのみち、次のターンに《神の怒り/Wrath of God》を打たないことにははじまらないからだ。2体目の《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》を呼び出していたLovettがアタックを宣言して残り4点。ここで《黒焦げ/Char》をうたれてしまえばそこまでだったが、Lovettは特に何もせずにターンを返してきた。
一縷の望みを託して、2枚の印鑑の白マナから《神の怒り/Wrath of God》を吹き荒らす森。すると、レスポンスで《稲妻のらせん/Lightning Helix》を唱えるLovett。少し逡巡してから、森はペインランドを起動して《呪文の噴出/Spell Burst》をこの火力へと使用した。実質的タップアウトである。…ええい、ままよ。
そして、続くターンにLovettは大記録の成就を阻むことに成功した。もう1枚の、《稲妻のらせん/Lightning Helix》。
Nick Lovett 3-1 森 勝洋
Sunday, Dec 3: 2:10 p.m. - 準々決勝 : Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル) vs. 三原 槙仁(大分)
by Akira Asahara
世界選手権準々決勝。トップ8に残った面々全てに共通する事は、ここまで来た以上、自分こそが世界王者になるという一念だろう。それには、まずここで勝たなければ世界王者への道は続かない。そしてこのテーブルでは、三原 槙仁とPaulo Vitor Damo da Rosaの準決勝への切符を賭けた戦いが始まろうとしている。
三原 槙仁は九州を代表するプレイヤーの一人で、その独特のデッキ構築センスや語り口などで知られる実力派のプレイヤー。今シーズンのエクステンデットで活躍した「CAL」の作者であり、今回の世界選手権のエクステンデット部門でも同デッキを使い、好成績を収め、トップ8入賞を果たした。日本選手権やファイナルズ、グランプリでのトップ8入賞は数多いが、世界規模のプレミアイベントでのトップ8は今回が初になる。愛称はマッキー。
三原のデッキは「ドラゴンストーム」。今大会ではメタの中心と言われたデッキの一つで、マナ加速と、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》の組み合わせで《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を大量に場に出すコンボデッキ。
対する、da Rosaは基本に忠実な「ボロス・デック・ウィンズ」。軽量クリーチャーと火力によって相手を倒すビートダウンデッキだ。
da Rosa :ボロス・デック・ウィン
三原 槙仁: ドラゴンストーム
Game 1
事前に誰かが三原にこのマッチアップの勝算を尋ねてみた所、「8-2で勝ち」という見解を示してくれたという。
基本的にコンボとビートダウンの勝負は速度勝負であり、このマッチアップにおいても例外ではない。そして、ドラゴンストームの速度というのは、大体4ターン程度であるが、引きムラが結構ある事で知られている。肝心の《ドラゴンの嵐》が来ないというのはもちろん、マナ加速が来ない、ドラゴンが手札に来すぎてしまうという事もある。
それを加味すると、そこまでの相性差は無いように感じられるというか、あって6-4程度ではと思わなくは無いのだが、三原はこの世界選手権でドラゴンストームを選んだ理由という事でこう話してくれた。
「行きの飛行機で、エコノミーの席が一杯で、ビジネスクラスの席になったんですよ。ここで、ビジネスつもれるなら、ドラゴンストームでもつもれるでしょ」
ふむ、確かにそれを加味すると、8-2あってもおかしくないかもしれない。
先行は三原。
《手練/Sleight of Hand》×2、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》×2、《炎の儀式/Rite of Flame》、《島/Island》×2枚という手札をマリガン。このドラゴンストームというデッキの欠点の一つに手札に来てしまったドラゴンは《ドラゴンの嵐》で場に出せないというのがあるので致し方無い所だろう。
マリガン後の手札は、《炎の儀式/Rite of Flame》、《睡蓮の花/Lotus Bloom》、《島/Island》×2、《差し戻し/Remand》、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》。でこれをキープ。
早いターンには決まるであろうこの試合、第1ゲームの試合経過は三原視点でターン毎に記していこう。
第1ターン
《島/Island》を置き、《睡蓮の花/Lotus Bloom》を待機状態に。da Rosaは《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》をキャスト。
第2ターン ドローは《時間の把握/Telling Time》。《島/Island》を置きエンド。返しのターンでda Rosaの《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》を《差し戻し/Remand》、ドローは《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》。
第3ターン。
ドロー《シヴの浅瀬/Shivan Reef》。メインフェイズで《時間の把握/Telling Time》をキャストすると、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》、《蒸気孔/Steam Vents》、《睡蓮の花/Lotus Bloom》が捲れる。さて、ここで、取るべき選択肢は? この時点の対戦相手のライフは《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》のアンタップインとダメージランドなどで16。
三原が取った選択は、《睡蓮の花/Lotus Bloom》をトップに、そして、《蒸気孔/Steam Vents》を手札にというものだった。ここは、手拍子で《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》を取ってしまいがちではあるが、次ターンに《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機が解除され、《炎の儀式/Rite of Flame》を用いても8マナしかない点、手札に既に《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が2体居る点などから、ドラゴンストームでの勝利を諦めるという選択にしたのだろう。
ドラゴンストームデッキには単純に《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》で勝つというモードの他にただ《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を出して殴って勝つという展開になる事がある。これは、ある意味苦し紛れではあるものの、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》があまりにも強い為に実は結構成り立ってしまう。これはドラゴンストームデッキの大きな利点と言ってもいい点だ。つまり、今回のゲームで三原はヘルカイトモードを選択したという事になる。
da Rosaは《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》を場に出し、《裂け目の稲妻/Rift Bolt》を待機。
第4ターン。
《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機が解除され。新たにドローした《睡蓮の花/Lotus Bloom》を待機。《炎の儀式/Rite of Flame》から《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をキャストし、《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》を除去しながら、da Rosaにも4点のダメージを叩き込む。返しのターン、da Rosaは待機の解除された《裂け目の稲妻/Rift Bolt》と《火山の鎚/Volcanic Hammer》でやむなくこのドラゴンを除去する。
《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》に火力を使わせる事で、ライフ面での猶予を得る事に成功した三原。この段階でのライフは16対10。
第5ターン。
《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機は2。da Rosaのアクションは《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》で殴るのみ。
第6ターン。
《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機は1。da Rosaは《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》を追加。イフは12対9。
第7ターン。
《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機が解除。da Rosaは《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を追加するが、エンド前に出てくるのは当然《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》。ライフは8対4。da Rosaの手札に《稲妻のらせん/Lightning Helix》は…無し。
三原 1-0 da Rosa
Game 2
サイドボード
三原
OUT
《万の眠り/Gigadrowse》-4
IN
《撤廃/Repeal》+4
da Rosa
OUT
《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》-4
《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》-3
IN
《氷結地獄/Cryoclasm》+4
《名誉の道行き/Honorable Passage》+3
第1ゲームのような勝ち方も出来るのが、このドラゴンストームデッキの利点であるとは言え、その本質、本領は《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》を使ってこそ発揮される。この第2ゲームは、まさにそういった展開になった。
先攻を取ったda Rosaの動きも決して悪いものでは無い。1ターン目こそクリーチャーを展開出来なかったが、2ターン目に《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》、3ターン目に《蒸気孔/Steam Vents》に《氷結地獄/Cryoclasm》、第4ターン目に《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》と三原のライフを7まで詰め、土地破壊を絡めながら、次のターンには止めをさせる体制を作る。しかし、その間に着々と《手練/Sleight of Hand》、《時間の把握/Telling Time》で手札を整理していく三原。
その第4ターンの返し,1ターン目に待機されていた《睡蓮の花/Lotus Bloom》が場に出ると、《炎の儀式/Rite of Flame》、《煮えたぎる歌/Seething Song》から、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》。そしてライブラリーから生み出される、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》×4。
決まれば勝ち、この理不尽で暴力的な強さがコンボデッキの魅力でもある。
三原 2-0 da Rosa
Game 3
このままの流れでいってしまうかと思われたが、da Rosaも意地を見せる。
先攻《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》 から、《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》と繋げ、第3ターンの《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》は一旦《差し戻し/Remand》されるが、 再召喚からの《裂け目の稲妻/Rift Bolt》待機。
三原も3デュエル連続、1ターン目の《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機に成功しているものの、今回は《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》が手札に無く、《手練/Sleight of Hand》、《時間の把握/Telling Time》とキャストするものの手に入れる事が出来ない。
そんなこんなで、既にライフは5まで減らされている。三原はやむなく、待機の解除された《睡蓮の花/Lotus Bloom》と《炎の儀式/Rite of Flame》を使い、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をキャスト。しかし先程、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をキャストする時はある意味苦し紛れであると言ったが、これは正に純正苦し紛れ。
その《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》によって、相手の場も《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》を残すのみになるが、三原のライフは5、そして、そこに《名誉の道行き/Honorable Passage》が突き刺さる。
三原 2-1 da Rosa
Game 4
今度は三原先攻。マリガン後の初手は《島/Island》、《時間の把握/Telling Time》、《手練/Sleight of Hand》、《撤廃/Repeal》×2、《煮えたぎる歌/Seething Song》。
土地が1枚しかない初手ではあるが、第1ターン目に《手練/Sleight of Hand》で《山/Mountain》を手に入れ、とりあえずほっと一息といったところ。相手は《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》。この《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を即座に返しで《撤廃/Repeal》、さらに次のターンの《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》も即《撤廃/Repeal》とダメージクロックを作らせない構え。さらに《時間の把握/Telling Time》で手札を整えるの…だが、《撤廃/Repeal》で引いたカードは《シヴの浅瀬/Shivan Reef》、《島/Island》、そして、《時間の把握/Telling Time》で捲れたカードは《狩り立てられたドラゴン/Hunted Dragon》、《睡蓮の花/Lotus Bloom》、《山/Mountain》ととても芳しくない。
よく見ると、初手に1枚しか無かったばずの土地がいまや何故かてんこ盛り状態になってしまい、手札には《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》も《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》も無く、相手の《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》と《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》に殴られ始める。
そして、殴られ終わるまで、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》が吹く事も《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が吼える事も無かった。
もう一つのコンボデッキの宿命、つまりキーカードを引かなければ負け。
Game 5
なんだかんだでもつれにもつれ、最終戦まで来てしまったこの勝負。果たして準決勝の椅子に座るのはどちらになるだろうか。
三原の初手は《炎の儀式/Rite of Flame》×2、《撤廃/Repeal》×1、と《蒸気孔/Steam Vents》を含めた土地が4枚でこれをキープ。da Rosaはダブルマリガン。
三原は《蒸気孔/Steam Vents》を置き、da Rosaは《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》で第5ゲームはスタート。この《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を例によって即《撤廃/Repeal》すると、今度は《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》が降臨。第3ターン、この《撤廃/Repeal》によって《差し戻し/Remand》を手に入れた三原はターンを返し、da Rosaの《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を《差し戻し/Remand》するが、これは再召喚される。
この《撤廃/Repeal》や《差し戻し/Remand》は根本的な解決や除去にはならないが、相手のクロックを遅らせつつ、ドローを進める事が出来るコンボデッキにとってはもっとも有効な干渉呪文だ。現にこの段階での三原のライフは16と余裕を残しながら、キャントリップでライブラリーを掘り進めているのだ。しかし、まだ《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》は手札には無い。
さらに、《時間の把握/Telling Time》で《時間の把握/Telling Time》、《手練/Sleight of Hand》、《睡蓮の花/Lotus Bloom》と捲れる。しかし《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》が捲れない。《時間の把握/Telling Time》を再度打つも捲れず、《手練/Sleight of Hand》を手札に加えたのみでターンを返す。返しに4点のダメージを《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》と《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》から受けライフは12。《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》を追加され、さらに《裂け目の稲妻/Rift Bolt》を待機。ここでライフは危険域に入り、少しの焦りの見える三原。
次のターン。手札には《炎の儀式/Rite of Flame》が2枚ある為、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》さえ引ければ、しかし、通常ドローは《島/Island》。望みを賭けて、《手練/Sleight of Hand》をキャストすると、そこには待っていたように《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》が!
勝った。準々決勝完!
と思い《炎の儀式/Rite of Flame》をキャスト、そしてもう1枚…。としたところで、止まる三原。
ん?
あれ?
あれあれあれ?
土地はセットして6枚、1マナ《手練/Sleight of Hand》で使ってしまったので、5マナ、《炎の儀式/Rite of Flame》で2マナ、3マナと増え、それ自身のコストで2使うとすると、5+2+3-2=8。つまりどう考えても、1マナ足りない。
ここでマナ計算をミスなのか。嘘だと言ってよマッキー。
手札には《撤廃/Repeal》があった為、《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》を返し次のターンで決めれば良かったのだが、既に1枚の《炎の儀式/Rite of Flame》を打ってしまったのでそれもままならない。
傍から見ても明らかにやってしまったという顔をしている三原。ケツの穴にツララを突っ込まれた状態とはまさにこの事だろう。
すでに長考なのか放心状態なのかこちらからは区別がつかない状態である。ヘッドジャッジにもプレイを促される三原。
そこで問題だ。この《炎の儀式/Rite of Flame》を一枚だけ使ってしまった状態で相手の攻撃をどうやってかわすか。
1.ハンサムのマッキーは突如反撃のアイデアがひらめく。
2.仲間が来て助けてくれる。
3.かわせない。現実は非情である。
我々がマルをつけたいのは答え②だが期待出来ない。《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》がアメリカンコミックヒーローのようにジャジャ-ンと登場して待ってましたと間一髪助けてくれるって訳にもいかない。そもそも、実際、手札にある《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を場に出しても勝つことは出来ないだろう。
ここで筆者が思い出したのは、渋谷DCIトーナメントセンターがあった頃、ある強豪が言っていた言葉だった。
「プレイミスをしたらライブラリーの土地が浮いてくるんだよ」
これは自身への戒めの言葉であるとも言えるが、プレイミスをしたプレイヤーはそれ相応の報いを受けるという理論だ。
やむなく《撤廃/Repeal》を《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》にキャストする三原。しかし、後に三原の言っていた言葉「ビジネスクラスつもれるなら、ドラゴンスト-ムでもつもれるでしょ」の重みをここで我々は思い知る事になる。
答え4 3枚目の《炎の儀式/Rite of Flame》をトップデッキ。
4+3+4-2=9。
三原 3-2 da Rosa
Sunday, Dec 3: 3:14 p.m. - 準決勝 : Nicholas Lovett(ウェールズ) vs. 小倉 陵(愛知)
by Akira Asahara
あの森 勝洋が準々決勝で負けた。この世界選手権決勝ラウンドでもっとも衝撃だったのはそれに尽きるだろう。あの小室 修をして「モリカツ、お前がナンバーワンだ」と言わしめ、初の2年連続の世界王者の最有力と思われていたからだ。
小倉 陵は今回、森がプロデュースしたデッキを使っており、75枚が全て同じ構成になっている。森 勝洋の無念を晴らす為に、そして自身が持つサンフランシスコでの世界選手権3位を越えるべく、この準決勝の舞台に期するものは大きいだろう。
しかし、それ以上に大きいのは逆ブロックにいるTiago Chan(ポルトガル)の存在では無いだろうか。小倉とTiagoの2人はうり2つであるというのは、1年程前から話題になっていた。当人達は否定しているが、今のところ、幼い頃生き別れになった兄弟という説が有力と言われている。しかし、天に極星は2つ、いや、小倉は2人はいらぬ。
こんな所で負ける訳にはいかない。最強の強敵(とも)が待っている。さあ、いこうTiagoのもとへ。
Nicholas Lovett :ボロス・デック・ウィンズ
小倉 : 青白トロン
Game 1
先攻を取った小倉だが、デッキ内の重いカードから順に来てしまったような手札をマリガン。しかし、マリガン後も《神秘の指導/Mystical Teachings》、《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》、《トリスケラバス/Triskelavus》、《神聖なる泉/Hallowed Fountain》、《ウルザの塔/Urza's Tower》とこれまた、重い所が集まってしまうが、ダブルマリガンは出来ぬとキープ。
対してNicholas Lovettzは《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》から、《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》、《裂け目の稲妻/Rift Bolt》とロケットスタート。
《神の怒り/Wrath of God》を引ければワンチャンスあるのだが、《強迫的な研究/Compulsive Research》で引くカードは全て《マナ漏出/Mana Leak》、《呪文嵌め/Spell Snare》などの打ち消し呪文であり、神の姿は影も形もない。それどころか土地も無い。ライフも《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》にひたすら削られ続けて5に。
そして、最後のドロー。あなたは神か? いえ、違います。
小倉 0-1 Nicholas Lovett
Game 2
再度小倉先攻。今度は《信仰の足枷/Faith's Fetters》、《呪文嵌め/Spell Snare》、《ディミーアの印鑑/Dimir Signet》、《赤の防御円/Circle of Protection: Red》、《ウルザの塔/Urza's Tower》、《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》、《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》という手札を文句なくキープ。
Nicholas Lovettはまたしても初動《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》。ちなみにボロス・デック・ウィンズのプレイヤーの実力を測る基準の一つに初動《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》の成功率というのがあるが、本日のNicholas Lovettの《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》率は8割を越えている。まさにボロス使いの鏡といってもいいだろう。
しかし、今ゲームでの小倉の動きは軽快だ。2ターン目に《ディミーアの印鑑/Dimir Signet》を設置すると、続いて出てきた《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》には《信仰の足枷/Faith's Fetters》。さらに《赤の防御円/Circle of Protection: Red》を置き火力を通さない布陣を作り、Nicholas Lovettは《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を追加する。
《赤の防御円/Circle of Protection: Red》で火力を封殺出来る今、必要なのはクリーチャーのダメージ源を無くす事、《神の怒り/Wrath of God》である、しかも今回は神も手札に居る。のだが、場に白マナが一つしか無く、《神の怒り/Wrath of God》を使う事が出来ない小倉。
《強迫的な研究/Compulsive Research》を使うも、白マナを手に入れる事が出来ず。じりじりとライフが削られ、ライフ9に。今だ白マナは一つ。
しかし、小倉の手札にはこの状況を打開出来る別のカードがあり、ここで、《トリスケラバス/Triskelavus》を召還する。Nicholas Lovettは《黒焦げ/Char》でこれを除去しようとするが、2マナの余剰マナがあった小倉の場に2つの置き土産を残す事に成功し、目の前の《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》は完全に沈黙する。
さらに追加の《トリスケラバス/Triskelavus》をキャストし、《赤の防御円/Circle of Protection: Red》で火力を封じられたNicholas Lovettに、場をひっくり返す事は出来なかった。
小倉 1-1 Nicholas Lovett
Game 3
先攻のNicholas Lovettは3たび《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》からのスタート。後攻の小倉の初手は《トリスケラバス/Triskelavus》×2、《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》、《ディミーアの印鑑/Dimir Signet》、《ウルザの鉱山/Urza's Mine》、《神聖なる泉/Hallowed Fountain》、《島/Island》。と多少きな臭い 手札でスタート。
Nicholas Lovettは《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》に続き《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》を戦線に加え、本体に《火山の鎚/Volcanic Hammer》と、攻め続け、小倉のライフは11。その間、小倉も、《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》からの《強迫的な研究/Compulsive Research》で手札を整えるが、《神の怒り/Wrath of God》は引けていない。
次のターンに《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》と《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》の攻撃を受けライフは7、さらに《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》を追加される。が返しのターンでも何も出来ない小倉。その次のターンにライフは2まで落ち込む、しかし、止めの手段を引けていないのか、このターンNicholas Lovettも《石の雨/Stone Rain》を唱えるに留まり、ここは小倉の《差し戻し/Remand》。
そしてその《差し戻し/Remand》で引いたカードが小倉を救う事になる。このドローで《ウルザの塔/Urza's Tower》を手に入れた小倉は、場にあった《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》、《ウルザの鉱山/Urza's Mine》と合わせ、膨大なマナを手に入れる。これによって、初手にあった《トリスケラバス/Triskelavus》がまぶしく輝き出した。この場での《トリスケラバス/Triskelavus》は《神の怒り/Wrath of God》を越えている、まさに新世界の神といっていい存在だ。
まず、7マナで《トリスケラバス/Triskelavus》をキャストすると、まずトークンを1つ生み、《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》を除去、さらに返しのターンで攻撃してきた《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》をもう1つ生み出したトークンで除去すると、《石の雨/Stone Rain》を《差し戻し/Remand》。次のターン、《信仰の足枷/Faith's Fetters》を《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》に付け、ライフを6と火力1回分の安全圏を確保すると、もう一体《トリスケラバス/Triskelavus》を戦線に追加し、完全に場を支配する。
返しのターンの、Nicholas Lovettの行動。《石の雨/Stone Rain》。
小倉 2-1 Nicholas Lovett
Game 4
先攻Nicholas Lovett。しかし、Nicholas Lovettの1ターン目にキャストしたクリーチャーは《巻物の大魔術師/Magus of the Scroll》。明らかに流れが変わって来たという事だろう。しかし、続いて《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》と繋げ、クロックは緩めない。
小倉は《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》、《呪文の噴出/Spell Burst》とスペル部分はあまりうれしくないが、《神聖なる泉/Hallowed Fountain》と《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》があり、マナの部分の問題は全くない手札。最初のドローと《赤の防御円/Circle of Protection: Red》とまずまずである。
《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》は《呪文の噴出/Spell Burst》で打ち消し、《火山の鎚/Volcanic Hammer》を《差し戻し/Remand》で手札に戻した後、《赤の防御円/Circle of Protection: Red》を設置し、ダメージの蓄積を最大限抑える事に成功する。がしかし、《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》は今だ止まらない。《信仰の足枷/Faith's Fetters》か《神の怒り/Wrath of God》さえ引ければなんとでもなる場ではあるのだが、無い袖は触れないというか、居ない神は怒れない。《トリスケラバス/Triskelavus》も居ない。
この後、手札に印鑑を4枚補充している間、小倉は食物連鎖の頂点《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》にかじられ続ける事となった。
小倉 2-2 Nicholas Lovett
Game 5
第5ゲームが始まる前、思いもよらぬ訃報が届いた。隣のテーブルで今だ準々決勝の死闘を演じていたTiago Chanが敗れたのだ。決勝で会おうと誓った強敵が、しかし、それが小倉の心に静かな闘志を生み出しのかもしれない。Tiagoの遺志は俺が継いだ、俺はお前、お前は俺なんだ。
先攻の小倉の手札は、《呪文嵌め/Spell Snare》、《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》、《ウルザの鉱山/Urza's Mine》×2、《差し戻し/Remand》、《強迫的な研究/Compulsive Research》、《神聖なる泉/Hallowed Fountain》。と申し分無くこれをキープ。
Nicholas Lovettは初動こそ《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》と動けるが、2枚目の土地が引けない。ここにきて《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》への愛が悪い方に作用してしまったのか、4ターン目まで2枚目の土地が置けず、キャスト出来た呪文は《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》×3のみ。
小倉はその《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》の一体を《信仰の足枷/Faith's Fetters》で封じ、ライフを確保し、《連絡/Tidings》で一気に手札を補充する。この時、Nicholas Lovettもやっと2枚目の土地を引き当て、《巻物の大魔術師/Magus of the Scroll》などを追加し攻勢に出る。小倉のライフは8。
しかし、Nicholas Lovettの前にまたしても立ち塞がったのは、《トリスケラバス/Triskelavus》だった。この《トリスケラバス/Triskelavus》とその生み出すトークンによって、Nicholas Lovettは全てのクリーチャーを失ってしまう。代わりに小倉も《トリスケラバス/Triskelavus》を失い、場は一旦まっさらになる。のだが、先にこの均衡を破ったのは、《ウルザの工廠/Urza's Factory》だった。
《ウルの工廠/Urza's Factory》によって、4体のトークンを生み出した上で十分なマナを確保した小倉は攻撃に転じる。小倉のライフは5、後が無いNicholas Lovettは最後の望みを賭けて、まず《火山の鎚/Volcanic Hammer》をプレイヤーに。
《呪文の噴出/Spell Burst》をバイバックで。その望みは完全に打ち砕かれた。
小倉陵、決勝の舞台へ。
小倉 3-2 Nicholas Lovett
Sunday, Dec 3: 3:30 p.m. - 決勝 : 小倉 陵(愛知) vs. 三原 槙仁(大分)
by Keita Mori
世界中からやってきた350余名のプレイヤーによる戦いは20回戦の長きにおよび、もはや戦いの舞台に踏みとどまっているのはただ2人だけである。そして、驚くべきことに、ワールドチャンピオンの座を決める最後の一幕は2人の日本人によって演じられることになった。
三原 槙仁(大分)は3度にわたって日本選手権の決勝ラウンドへと勝ち上がっている強豪で、昨シーズンのエクステンデッド戦線で大きな話題となったコンボデッキ「CAL」を作り上げた人物だ。しかし、そんなこれまでの経歴がすべて霞んでしまうようなドラマティックなトップデックを本日の決勝ラウンドで三原は見せつけている。準々決勝、準決勝とも、劇的なドローを世界中に見せつけて決勝の舞台をつかみとっているのだ。
対する小倉 陵(愛知)。彼も一昨年の世界選手権サンフランシスコ大会で3位入賞を果たしている実力者である。2年前にはたどりつけなかった最後のステージへと勝ち進んだ彼は、これでとうとう恩師の足跡に追いついたことになる。ベルリンで岡本 尋(愛知)が涙を飲んだ世界選手権決勝戦、はたしてその愛弟子は最後の試練を乗り越えられるだろうか。
小倉 陵 : 青白ウルザトロン
三原 槙仁 : ドラゴンストーム
Game 1
《睡蓮の花/Lotus Bloom》、《時間の把握/Telling Time》とスタートした三原 槙仁が、第4ターン目にその《睡蓮の花》と《炎の儀式/Rite of Flame》を使用して素早く《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を召喚し、アタックしはじめる。
すると、テイクマリガンからのスタートを強いられた小倉 陵は――まったく色マナが出ないまま殴り殺されてしまうのだった。
三原 槙仁 1-0 小倉 陵
Game 2
テイクマリガンを余儀なくされながらも、《強迫的な研究/Compulsive Research》を連打して手札を整えながら印鑑を並べていく小倉 陵。対する三原 槙仁も土地を淡々と並べながら《手練/Sleight of Hand》、《時間の把握/Telling Time》とプレイしていく。
最初にアクションをおこしたのは小倉 陵で、それは《道化の王笏/Jester's Scepter》のプレイだった。三原は少しでもキーカードをこのアーティファクトに奪われてしまわないように《時間の把握/Telling Time》でレスポンスする。続けて仕掛けるのも小倉で、彼は《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を召喚して3点ずつのダメージレースを開始し、三原に「制限時間」を設定した。さらに小倉は《神秘の指導/Mystical Teachings》で《計略縛り/Trickbind》をサーチしておき、その上で三原の貯蓄ランドのひとつに《信仰の足枷/Faith's Fetters》をエンチャントする。
三原は淡々と《戦慄艦の浅瀬/Dreadship Reef》以下の貯蓄ランドにひたすらカウンターをチャージしていき、きたるべきアクションのときのためにマナを蓄えていく。
そして、《テフェリー》によって残りライフ2点にまで削り落とされたギリギリのタイミングで、三原はコンボ成就のために動く。12枚のランドから合計22マナを供給できる状態の三原は、小倉に《計略縛り/Trickbind》を1度プレイされながらも、都合3枚の《万の眠り/Gigadrowse》を使用して小倉とその《王笏》を実質的タップアウトに追い込んだのだ。
そこから、《煮えたぎる歌/Seething Song》、《煮えたぎる歌/Seething Song》、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》!
実際にドラゴンたちが登場するよりも早く、小倉は投了を宣言した。
三原 槙仁 2-0 小倉 陵
Game 3
準決勝と準々決勝での強烈なトップデックからも伝わってくることだが、三原 槙仁はまさしくその豪腕冴え渡るといった感じの充実ぶりである。一方の小倉もなんとか一矢報いるべしと《赤の防御円/Circle of Protection: Red》をプレイし、次々と2枚の《道化の王笏/Jester's Scepter》を設置して三原をけん制してみせた。
三原は第2ゲームさながらに貯蓄ランドのカウンターをため続け、静かに《手練/Sleight of Hand》や《時間の把握/Telling Time》で手札とマナを整えていく。《睡蓮の花/Lotus Bloom》を置き、小倉のフラッシュバック呪文だけを《差し戻し/Remand》で次々にカウンターしつつキャントリップ。
小倉は早々に「3枚で7マナ」のウルザトロン=システムを完成させているものの、《ウルザの工廠/Urza's Factory》からのトークンや《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》といった脅威を展開できない。《道化の王笏/Jester's Scepter》こそ2枚張られてしまっているものの、「制限時間」を設定されていないということは三原にとってまことに幸運だった。
そして、小倉が3枚目の《道化の王笏/Jester's Scepter》をプレイしにかかったところで、三原 槙仁は行動を起こした。
「場に出たときの効果にレスポンスして…」
と、カウンター満載の貯蓄ランドを利用して13マナをひねり出し、《万の眠り/Gigadrowse》をプレイ。2枚目に場に出た《道化の王笏》を最初のターゲットとし、残る12個の「複製」によるコピーで小倉のパーマネントをかわるがわるに指定していった。
これを受けて、小倉は設置済み《道化の王笏》を起動して《万の眠り/Gigadrowse》を打ち消しにかかる。すると、三原は自分の《万の眠り/Gigadrowse》を《差し戻し/Remand》で手札に返し、《睡蓮の花》を使用しての《時間の把握》を経由してから、再度《万の眠り》を「複製」して小倉をタップアウトしにかかったのだ。
しばらく考え込んでから小倉はこれを受け入れ、三原 槙仁にターンを渡す。三原はもう一枚の《万の眠り/Gigadrowse》をすでに用意しており、これを使用して小倉に残された最後の無色マナソース2つを封じ込めにかかった。
小倉はせめてマナを出して《赤の防御円/Circle of Protection: Red》を数回起動してみるが、これはほとんどもう投了の合図に等しい所作だった。念のためにヘッドジャッジを呼んでのルール確認がなされるが、《防御円》はその起動に当たってソースを選択する必要がある。そして、おそらくそのダメージソースをもたらす呪文は、今はまだ三原 槙仁の手札に潜んでいるのだ!
完全にタップアウト状態となったライバルを尻目に、三原は栄光の軌跡を描きはじめた。《手練/Sleight of Hand》、《手練/Sleight of Hand》、《炎の儀式/Rite of Flame》、《炎の儀式/Rite of Flame》――そして《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》。
そう、今年の世界選手権を制したのは、かつてはファンデッキの種にもならないと笑われたタイムシフトカードだったのだ!
三原 槙仁 3-0 小倉 陵
Congratulations to World Champion 2006, Makihito Mihara !
Sunday, Dec 3: 4:01 p.m. - 国別対抗団体戦決勝 : 日本代表 vs. オランダ代表
by Itaru Ishida
チームロチェスタードラフト。それは数あるマジック・ザ・ギャザリングのレギュレーションの中で、最も難解で最もハードなレギュレーションだ。
各チームのプレイヤーは限られた時間の中で己のデッキを最大限に高めつつ、対戦相手の戦力を削ぐためのピックを要求される。己を知り、敵を知り、未来さえも予測しながら戦うレギュレーション。それがチームロチェスタードラフトというものに他ならない。
この究極とも言えるレギュレーションを勝ち抜いて、最後に相対する事となったのは、森勝洋率いる日本と、ヨーロッパが誇るスタープレイヤー、Kamiel CornelissenとJulien Nuijitenを擁したオランダだ。どちらも今大会における大本命といえるチームであり、森はマスターズ、Kamielはプロツアーでの優勝経験がある。
日本の連覇か? それともオランダ悲願の初優勝か? その答えはこのドラフトの先にある。
■ Draft Strategy
それではまず、各チームの基本戦略を解説しよう。
日本は森を司令塔とした完全なワントップ型のドラフトが特徴的で、A席に座る片山が相手のデッキのキーカードをカットしつつ、それを柔軟にデッキに取り込んでいき、BとC席に座る森と山本がフォワード役となって勝ち星を稼ぐ戦略を取っている。相手チームのフォワードを牽制しつつ、自分のチームの戦力を確実に強化していくという日本チームの戦い方は、このレギュレーションにおける最も信頼の置ける戦略だといえるだろう。
対するオランダはKamielとJulienの二人が司令塔となるのツートップ型の形態を取っており、日本とは違い相手の戦略に対応してそれぞれの役割を変化させていくという、高度な戦略をとっている。事実、予選ラウンドでは日本側の片山が《肥満死体/Corpulent Corpse》と《闇の萎縮/Dark Withering》をピックすると、すぐさまジュリアンは自分の色を黒へと変更して相手のカードを封殺することに成功している。
先手の理を生かした戦略を得意とする日本と、後手を取って相手の出方を窺うオランダ。静と動という対照的な戦いの幕が今切って落とされた。
■ Drafting
と、ここで意外なことに、開始前のコイントスで勝利したオランダ側が選んだのはなんと先手。先手を得意とする日本には、得意な後手よりも相手に先手を渡さないことが重要という事なのだろうか?
ルールの変更によりドラフト中にも会話ができるようになったため、後手での戦略を手短に片山と山本に森が説明する中、オランダチームのKamielは自分の役割である青いデッキを作り上げるための第一歩として、《入念な考慮/Careful Consideration》をピックする。続いて隣に座るRovert Van Medpoort が《ワーム呼び/Wurmcalling》をピックしたのを確認した後、森が目まぐるしく指示を出し始める。
まずは片山に《堕落の触手/Tendrils of Corruption》を取らせ、赤と黒という色の組み合わせを指示し、自分は《巣穴からの総出/Empty the Warrens》、山本には《騎兵戦の達人/Cavalry Master》と予選ラウンドで使った戦術でピックを進めていく。ここでオランダ側の動きも日本に呼応するように慌しくなり、山本が白をドラフトし始めた所でRovertに黒を始めるように指示を出し、逆に片山と相対する事になるJulienは緑の《ヘイヴンウッドのワーム/Havenwood Wurm》や白の《ちらつくスピリット/Flickering Spirit》といった除去に耐性のあるクリーチャーを重点的にピックし始める。
均衡していたバランスが崩れたのは一週目の最後のパックでの事だった。その中で現れたのは《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》。赤と黒でデッキを構築している片山にとってはまさに悪夢といっていいカードである。それが対戦相手のJulienの手に渡ってしまったのだ。日本チームの表情が一気に険しくなるのも仕方のないことだろう。
二週目となるパックで巻き返しを図りたい日本だが、その期待を嘲笑うかのように、パックから出るカードはオランダ側に有利なものばかり。自分のデッキを強化するチャンスにも、《グリフィンの導き/Griffin Guide》をやむなくカットすると言った苦渋の選択を迫られてしまう。逆にオランダ側にとってこの二週目は豊作と言っていい展開で、《無慈悲なる者ケアヴェク/Kaervek the Merciless》や《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》と言った爆弾カードを手に入れ一気にデッキの強化を果たしている。
勝つためにはなんとしてでもデッキの強化を図りたい日本だが、オランダが《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》、《絞殺の煤/Strangling Soot》、さらには《結核/Phthisis》に《高位の秘儀術師、イス/Ith, High Arcanist》と着実にデッキを強化していく中、とうとう決定打となるようなカードにめぐり合う事無くドラフトを終えることとなってしまった。
■ Deck Building
ドラフトの段階では一歩相手に譲る展開となってしまった日本だが、試合はドラフトだけで決まるものではない。作ったデッキを駆って勝利してこそ初めて栄冠に手が届くのだ。
それではここで各対戦についてを軽く紹介していこう。
まずはA席に座るJulien対片山の対戦だが、Julienが白緑の《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》と《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》を持つマナ加速+大型クリーチャーというデッキなのに対し、片山は赤黒の除去を豊富に持つデッキを作り上げている。黒のカードの出方が非常に潤沢だったため、片山のデッキは爆弾こそないものの強力なカードがひしめくデッキへと仕上がっている。Julienとしては《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》さえ召喚できれば・・・というマッチである。
続いてB席に座る二人のチャンピオンだが、森のデッキは青緑のクリーチャーの展開力とアドヴァンテージを生かしたデッキとなっている。しかしKamielのデッキは《稲妻の天使/Lightning Angel》に《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》、《高位の秘儀術師、イス/Ith, High Arcanist》と充実のクリーチャー陣に《象牙の巨人/Ivory Giant》と《一瞬の瞬き/Momentary Blink》のコンボまで搭載する、卓内でも最強の強さを持つデッキを作り上げている。正直Kamielのタイトなマナベースが崩れないかぎり森には厳しい戦いとなるだろう。
そして両陣営の勝利の行方の鍵を握るのが、山本とRovertの対戦である。3枚の《絞殺の煤/Strangling Soot》を持ち、《結核/Phthisis》や《無慈悲なる者ケアヴェク/Kaervek the Merciless》といった多くのパワーカードを内包するRovertのデッキに対し、山本の白緑はこれと言って目立つパーツの無いデッキとなってしまっている。しかし、除去を前面に押し出してはいるもののそれらの情報がすべてが相手に筒抜けな以上、それに対策する事は可能なのだ。通常ならばサイドボード予備軍である《五制術の護法印/Pentarch Ward》もこのマッチでは、値千金のカードとなりえるのだ。
■Match Report
森 勝洋 vs. Kamiel Cornelissen
前評判では森が圧倒的に不利という対戦だが、実際の対戦においてはそのカードパワーもさることながらKamielの持つ勝負強さをも見せ付ける展開となった。
1ゲーム目は召喚した《稲妻の天使/Lightning Angel》を《一瞬の瞬き/Momentary Blink》で守り切り、2ゲーム目は《象牙の巨人/Ivory Giant》、《高位の秘儀術師、イス/Ith, High Arcanist》、《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》という順番で待機すると、またしても4ターン目に《稲妻の天使/Lightning Angel》をレッドゾーンへと降臨させる。この時点で森は2枚目の《森/Forest》を引けておらず、すぐさまチームメイトへのアドバイスを優先すべく投了を宣言した。
森勝洋 0-2 Kamiel Cornelissen
この時点でA席の片山が1本目をJulienの《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》で落とし、C席の山本がRovertが待機した《結核/Phthisis》を《五制術の護法印/Pentarch Ward》でかわして1本目を勝利している。
山本 昇平 vs. Lovert Van Medroort
先勝した勢いでこのまま波に乗りたい山本だったが、2本目はRovertもそのデッキの強さを遺憾なく発揮する事となった。山本のクリーチャーを丁寧に焼き払い、《練達の育種師、エンドレク・サール/Endrek Sahr, Master Breeder》から大量のスラルトークンで瞬く間に山本を投了へと追いやってしまったのだ。 その横では片山がJuilenとの勝負を1:1に戻し、勝利への望みを繋いでいる。
そして、運命の第3ゲームが始まった。
《アムローの偵察兵/Amrou Scout》、《スカーウッドのツリーフォーク/Scarwood Treefolk》と軽快にクリーチャーを展開する山本に対し、Rovertは1ターン目に《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》を待機し《ぶどう弾/Grapeshot》で《アムローの偵察兵/Amrou Scout》を除去した後、4ターン目まで何もできずにいた。
それもそのはずで、Rovertの手札は《練達の育種師、エンドレク・サール/Endrek Sahr, Master Breeder》、《走り回る大怪物/Skittering Monstrosity》、《闇の萎縮/Dark Withering》、《情け知らずのエロン/Eron the Relentless》、《無慈悲なる者ケアヴェク/Kaervek the Merciless》といったキャストできないスペルで溢れており、唯一キャストできるものも《地の底のシャンブラー/Subterranean Shambler》のみという有様だったのだ。
そこに畳み掛けるように山本は《凶暴なサリッド/Savage Thallid》に《五制術の護法印/Pentarch Ward》をエンチャントして攻撃を加え続ける。なんとか5マナ目を引き当てたRovertも黒いクリーチャーを召喚して《凶暴なサリッド/Savage Thallid》をブロックするが、《凶暴なサリッド/Savage Thallid》の持つ再生能力で再生されてしまい、状況は悪くなる一方だった。
しかし、これで終わるほどオランダ代表は甘くは無い。いよいよかと思われた最後のドローで《ベラドンナの暗殺者/Nightshade Assassin》を引き当て、《凶暴なサリッド/Savage Thallid》を除去することに成功する。
以前圧倒的不利な場ながら、このドローはRovertにとって、勝利への道しるべに他ならなかった。続くターンで何とか場を立て直そうとするRovertに止めを刺そうと、勝負をかけにきた山本の胞子トークンと《ペンデルヘイヴンの古老/Pendelhaven Elder》に対し初手から出せずにいた《地の底のシャンブラー/Subterranean Shambler》が突き刺さり、《無慈悲なる者ケアヴェク/Kaervek the Merciless》が場へと姿を表す。
そして、ケアヴェクはその名の通りその無慈悲なる効果を持って山本の場を制圧したのだった。
山本昌平 1-2 Rovert Van Medroort
そしてこの時、2006年度の団体戦の優勝国が決まったのだった。
Congratulations to Team Netherland!
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