様々な物語を紡ぎ、多くの思いが交錯し消えていった日本選手権もついに最終日。
「帰ってきた天才少年」諸藤 拓馬(福岡)と「東西制覇を狙う八王子の智将」三津家 和彦(大阪)の理系対決となった準々決勝。お互いに社会人となり、十分な練習時間をとれなくなって、それでも日本選手権のトップ8に入ってこれるのは、地力の違いか運命か。
実はこの二人、スイスラウンドの最終14回戦でも当たっている。
13回戦終了の時点で三津家は最終戦インテンショナル・ドロー(=ID)で決勝ラウンド進出が確定する場面であり、諸藤としてもIDで十分な場面。当然ID…かと思いきや、諸藤はギリギリのラインで戦う友人達の為にIDを拒否した。
そして、結果、勝負に三津家が負けたところで、ギリギリのラインにいた友人の負けを聞いた諸藤は、「トップ8にこの人(三津家)が入っても勝てる」と考え、ID承諾。三津家は完全に敵に塩を送られる形でトップ8入りをする、いや、させられる事になる。
※IDの選択は試合開始時に限らない。
プライドが高い事で知られる三津家としては、リベンジに燃えている事だろう。
三津家:いや、もう全然ダメだわ
そう思ってインタビューをした筆者は三津家のコメントに肩透かしを食らう。三津家がこんなに弱気になっている姿は珍しい。
三津家:昨日も結構やったんだけどね…勝率は10%くらいじゃない?もっとやばいかも。
会場の最大勢力は、赤単・青トロン・Viridian Ratsと読みきって構築してきた三津家のデック。実際にその読みは的中し、メタゲームの勝ち組としてトップ8を決めた三津家だったが、そんな三津家にとって緑系のトロンはまさに想定外の相手だった。
三津家:緑はサーチがあるからね。《石の雨/Stone Rain》じゃ間にあわないんだよ。あー、マナがきつくても《塩まき/Sowing Salt》を入れておくべきだった…あと、同系だと《金属モックス/Chrome Mox》のディスアドバンテージ分ダメだよ。
三津家と諸藤の両名と交流が深く、調整相手もつとめていた平林 和哉(滋賀)も同様のコメントを残している。
平林:とにかく《金属モックス/Chrome Mox》がダメだね。その分で必ず負ける。
両方のデックを熟知(平林は諸藤と同じく三原 槙仁(大分)のデックで出場している)する平林からも、やはり、デック相性的には勝ち目が無いと答える。
三津家:そりゃやっぱ勝ちたいけど…最後は引くしかないね。で、相手が引かない事を祈る。
諸藤:そりゃ、もう、ここ(と腕を力強く叩く)の勝負でしょ!
諸藤は笑いながら試合前に語ってくれた。諸藤のいうここ(腕)とはプレイングの事ではない。ドローする力、カードをひきつける力の事をいう。
諸藤:これ(腕)凄いですから。ぶんぶん行きますよ! あーでも三原にはかなわんかもなぁ…
ほとんど練習ができないまま本戦に出場することになった諸藤にとって、今回のトップ8入賞は全てが三原のおかげだという。
諸藤:できれば三原とやりたいですよね。ブンブン言わせながら。
雪辱に燃える三津家と、友との対戦を望む諸藤。思いが届き物語を紡ぎ続けるのは一体どっちか。
Game 1
前日にトップ8デックをチェックしている際、三津家のデックの中の《猛烈に食うもの/Magnivore》が《死を食うもの/Mortivore》になっていた事が判明し、このマッチは1デュエルロスからスタートする事になった。
ただでさえデック相性で不利な三津家としてはこれは痛い。
諸藤 1-0 三津家
Game 2
そして、そんな背水の陣の三津家が先攻。
だが、手札に土地が無い。しかたなくマリガン。
今度の手札は土地は1枚だが、《マグマの噴流/Magma Jet》や《森の占術/Sylvan Scrying》、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》までそろった手札。あと一枚土地が引ければ…そう考えて三津家はキープする。
諸藤は余裕でキープ。
諸藤が土地を置いて《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をキャストした返しのターン。力強くドローをする三津家。だが叶わず。弱弱しくターンをエンドする三津家。今日の三津家はホントに覇気が無い。勝てる時の三津家はオーラが見えるほど勝気にあふれているのに。それこそ、「やる気のイデア」とまでよばれる志村 一郎(茨城)にも負けないほどだ。その三津家に今日は覇気が無い。フォームを崩した三津家はドローもついてこない。
一方、マイペースを保っている諸藤は、「なやむなぁ」といいながら《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》から《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》をキャスト。三津家も何とか土地を引き当て、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》をキャスト。一応一安心。
アップキープに《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動し、二枚めのウルザトロンをセットする諸藤。そのエンドに三津家は《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》の能力を起動して、何とかマナベースを確立する。続くターンに《森の占術/Sylvan Scrying》キャストからの《ウルザの塔/Urza's Tower》で三津家もトロンにリーチ。
三津家のエンドに《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》能力起動から《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動した諸藤は、その3枚を並び替えずにライブラリーのトップに乗せる。今の諸藤にはドロー操作の力も必要ないのだろうか。そう、「コレ(腕)」の力である。
そして、なんなく《ウルザの塔/Urza's Tower》でウルザトロンをそろえた諸藤は双呪《刈り取りと種まき/Reap and Sow》で三津家のトロンを破壊しつつ、自分の場に土地を増やす。たまらず三津家は《マグマの噴流/Magma Jet》をスタックで。占術で見たライブラリーのトップは…《メフィドロスの吸血鬼/Mephidross Vampire》と《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》。これが「コレ(腕)」の差か。フォームを崩さない諸藤とフォームを守り続ける三津家ではドローの質まで差が出ている。これはオカルトではない、意思の力なのだ。
そんな三津家が逆転の望みをかけた《永遠の証人/Eternal Witness》も《卑下/Condescend》され、返しのターンで《歯と爪/Tooth and Nail》炸裂。もはや三津家には投了する以外の選択肢は無かった。
諸藤 2-0 三津家
デック相性の差や、ドローの差よりも、真横で観戦している筆者としては、とにかくお互いの空気の差が一番強く感じられる。諸藤はペースを乱さず、常にニコニコ。一方の三津家は、完全にペースを乱して、切羽詰った様子だ。そんな三津家に諸藤が話しかける。
諸藤:東京産まれ?
三津家:東京生まれの東京育ち…
諸藤:今大阪?
三津家:就職でね。
諸藤:そっかぁ…一人暮らし?さみしかろ?
三津家:いや、全然。
諸藤の余裕には頭が下がる。
シャッフルしつつも、さかんに盟友三原の結果を気にしている。
Game 3
起死回生を狙う三津家の手札…まずいきなり《歯と爪/Tooth and Nail》が2枚でやる気半減。そしてそのまま土地がなく、結果《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》が2枚あるとはいえ土地は1枚の厳しいスタート。
だが、その手札を力強くキープ。そんななやんだ三津家の姿を見て諸藤もキープ。
1ターン目に《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を置く三津家をみて諸藤は「デジマ?(マジで?の意味と思われる)」と一言。どうやら、諸藤は三津家が辛い手札と判断して自分も辛い手札でキープした様子。手札に土地が無いと知らない諸藤にとってコレは予想外だろう。
《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を願って力強くドローする諸藤だったが叶わず、土地を置いて終了する。
そして、三津家のアップキープ。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動するが…トップ3枚に土地の姿は見当たらない。今日の三津家はキャラを忘れているのかと思わされるくらいに弱い。
だが、一方の諸藤も今回は微妙に不調。土地セットからの《団結のタリスマン/Talisman of Unity》を置くだけにとどめる。
ドロー後の三津家。最後の望みをかけた《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》起動…遂に遂に土地を発見。《金属モックス/Chrome Mox》の姿も見える。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の能力で土地を引き、2枚目の《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を置いて終了。ホッと一安心といったところか。
返しのターンで諸藤が置いたのは、デックの中で1枚だけ緑マナの出ない《島/Island》。諸藤の調子は下り坂なのか。なんとか《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をおきつつ、《森の占術/Sylvan Scrying》で《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》を持ってくる。
《金属モックス/Chrome Mox》の力でなんとかマナベースの不安を解消した三津家、いや、解消した所では無い。《森の占術/Sylvan Scrying》から《ウルザの塔/Urza's Tower》を持ってきてセットした三津家の場には遂にウルザトロンがそろってしまったのだ。最初事故っていた三津家に先にトロンがそろう、ついに三津家に追い風がふいてきたか。
ここからお互いが相手のトロンを阻害しつつ、自分のトロンを成立させようとする一進一退の攻防となる。箇条書きでお送りしよう。
・諸藤が《刈り取りと種まき/Reap and Sow》で三津家の《ウルザの鉱山/Urza's Mine》を破壊。
・三津家が《刈り取りと種まき/Reap and Sow》で《ウルザの鉱山/Urza's Mine》を持ってくる(トロン成立)。
・諸藤が《森の占術/Sylvan Scrying》で塔をセットしつつ《変容する境界/Shifting Borders》で島と鉱山を交換(トロン成立)
・三津家が《石の雨/Stone Rain》で諸藤の鉱山(もとは自分のもの)を破壊。
・諸藤が《森の占術/Sylvan Scrying》から鉱山をセット(トロン成立)。
と、ここまで、お互い一歩も譲らない勝負が展開された。
しかし、三津家が墓地の《ウルザの鉱山/Urza's Mine》を回収しようとキャストした《永遠の証人/Eternal Witness》を諸藤が《卑下/Condescend》した事で一気に均衡が崩れる。
まずは《精神隷属器/Mindslaver》
そして《歯と爪/Tooth and Nail》
三津家はただ呆然と投了するしかなかった。
諸藤 3-0三津家
終了後、三津家は敗因をこう語る。
三津家:《島/Island》だよ。《変容する境界/Shifting Borders》で交換されたのが、あのデックで(ウルザ地形以外で)唯一緑マナの出ない島だったせいで緑マナが足りなくなって負けた。…他のどのカードでもない、デックに1枚の島を引けたのが強かったよ…
一見、無駄にドローしたかのように見えた《島/Island》が勝負を決めた。この大会での諸藤の勢いが本物である事を証明するようなエピソードではないか。
そんな諸藤は、試合が終了するや否や「三原の結果が気になるので」と準々決勝を戦う三原の応援へと向かった。この大会における諸藤の三原への感謝心を証明するようなエピソードではないか。
だが、そんな諸藤が準々決勝で見たのは、なすすべなく敗北する三原の姿であった。
三原を下したのは「世界のISO」こと大礒 正嗣(広島)である。
帰ってきた天才少年は、現代の天才少年へ、盟友の仇討ち合戦を挑む。