藤田 修 vs. Nicolai Herzog

決勝

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 準々決勝で Kamiel Cornelissen を、準決勝では Anton Jonnson を。世界の強豪が集う Pro Tour、その中の更に選りすぐった Top 8 に名を連ねる者共を倒し、藤田は決勝の場に勝ち進んだ。

 最後の決戦で待ち受けるのは、ヨーロッパの強豪 Nicolai Herzog だ。予選を一番で通過した Kamiel の選択によって、決勝ドラフトはこの Nicolai からスタートした。藤田はその右隣の八番だ。Nicolai が開けた第一パックの中には、神とあがめ奉られるトップカードの一枚《腐食ナメクジ/Molder Slug》が含まれていた。Nicolai は喜びこれを獲得し、《腐食ナメクジ/Molder Slug》に加えて《テル=ジラードのトロール/Trolls of Tel-Jilad》といった巨大クリーチャーを操る赤緑デッキを作りあげた。

 日本勢にとってプロツアー優勝が残された悲願であるように、Nicolai にとってもこの勝利は譲れないものだ。昨年この時期に行われた Pro Tour Chicago で、Nicolai は Kai Budde に最後の一戦を落とした。一年かけて探し続けてきた忘れ物、それが優勝の栄冠だ。

Game 1

 コインフリップの結果は、Nicolai の先手。Nicolai はまず《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》をセットすると、続けて《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》をプレイする。

 藤田は初手の二枚から土地を引けないまま《銀のマイア/Silver Myr》を召喚。勿論、これは手札を見ていない Nicolai が知るよしもないが、彼は《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》を起動させなかった。

 Nicolai が《ヴィリジアンの社交家/Viridian Joiner》を、藤田は二体目の《銀のマイア/Silver Myr》を追加する。

 藤田がマナに困っていたように、Nicolai も 4 ターン目土地を置けなかった。だが、先ほど召喚しておいた《ヴィリジアンの社交家/Viridian Joiner》の力を使用し、このターンに《ヘマタイトのゴーレム/Hematite Golem》を召喚する。その終了時に、藤田も残されたマナで準々決勝の決め手となった《チス=ゴリアの鱗/Scale of Chiss-Goria》を設置。後々のためにアーティファクト数を増やしておく。

 藤田は引いたカードが土地なのを確認すると、隠す必要も無くそのまま卓上にセットする。引いたかと思わず反応する Nicolai 。プレイの鋭さとは別に、素直な部分を併せ持つプレイヤーだ。

 マナが揃ってきた藤田は、ようやくここで《水晶の破片/Crystal Shard》をプレイ。マナに問題が残る Nicolai の《ヴィリジアンの社交家/Viridian Joiner》を狙い手札に戻す。

 だが、こういったやりとりの間にも、2 ターン目に登場した《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》の攻撃はこつこつと続いている。アーティファクト主体の藤田は本体に通す以外無く早くもライフが残り 14 。

 Nicolai の目がせわしなく動く。場の全てを見逃さず必勝の計算を為すため全神経を集中させる。まず Nicolai は《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》を出し土地を増やした。マナさえ増やしてしまえば《水晶の破片/Crystal Shard》の効果は自分のクリーチャー回避用に限定される。

 藤田は攻撃の拠点を作るべく《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》を召喚。多くのアーティファクトによってそのパワーは既に 7 にまで増加している。もし妨害されないなら、僅か三回の攻撃で Nicolai を倒すだけの力を持っている。

 だが、Nicolai が場に出した《氷の干渉器/Icy Manipulator》が状況を一変させる。これまで、《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》から《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》を守ってきたのは《水晶の破片/Crystal Shard》だ。だが、《氷の干渉器/Icy Manipulator》によって寝かせられた《水晶の破片/Crystal Shard》は、ただの置物でしかない。

 藤田の攻撃宣言。《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》が攻撃を行うと、先に書いた通りまずは《水晶の破片/Crystal Shard》がタップさせる。《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》が破裂し、《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》は墓地へと落ちる。

 攻撃の足がかりを失い、苦しさを増した藤田。そろそろ我慢も限界と、呼び出した《ニューロックの使い魔/Neurok Familiar》で《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》をブロックするが、ここでは当然のように《捕食者の一撃/Predator’s Strike》が飛ぶ。力を増した一撃が、いつもより激しく藤田の体をえぐる。

 ようやく藤田も《磁石マイア/Lodestone Myr》を引くが、一体では《氷の干渉器/Icy Manipulator》の防御網を突破する事が出来ない。その間にも《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》だけがレッドゾーンを通過し攻撃を続け、それ以外の生物は互いの陣地でそれを見守る。

 5、3、1。
 
 着実に刻まれる 2 点のクロック。結局、最後までこれは止まらず。

Nicolai 1 - 藤田 0

Game 2

 《ニューロックの滑空翼/Neurok Hoversail》から《銀のマイア/Silver Myr》《ウィザードの模造品/Wizard Replica》と順調に展開する藤田。だが、その《ウィザードの模造品/Wizard Replica》はすぐに《静電気の稲妻/Electrostatic Bolt》で処理される。Nicolai は《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》を出して終了。

 土地を引き気味の藤田、このターンは《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》を出し悪く無いが、早くも手札が土地ばかりとなってしまい、次ターン以降は引き次第と苦しい展開を強いられる。

 対して Nicolai は二体目の《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》を出してから、ゲーム 1 でも大活躍をみせた 《氷の干渉器/Icy Manipulator》を。

 これだけでも十分に苦しいのに、藤田の引きは準々決勝・準決勝と違って全くぴりっとしない。引けども引けども土地土地土地と土地満開。場に《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》二体、《氷の干渉器/Icy Manipulator》とアーティファクトばかりをコントロールする Nicolai が苦笑しながら出した《腐食ナメクジ/Molder Slug》こそ《恐怖/Terror》で除去するものの、二体の模造品を全く止める事が出来ず。

Nicolai 2 - 藤田 0

Game 3

 早くもリーチをかけられてしまった藤田。もう後が無い。背水の陣で臨んだこのゲームで、藤田は初手をにらみつけるように見ながら考える。

 《島/Island》《島/Island》《沼/Swamp》《上天の呪文爆弾/AEther Spellbomb》《チス=ゴリアの鱗/Scale of Chiss-Goria》《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》《恐怖/Terror

 決して悪くは無いが、今一番欲しい爆発力には欠けている。だが、マリガンしてもこれ以上になる保証も無い。藤田は訝しみながら初手のキープを宣言する。

 Nicolai は全く迷い無くキープ。

 《上天の呪文爆弾/AEther Spellbomb》から《チス=ゴリアの鱗/Scale of Chiss-Goria》、そして引いてきた《ニューロックの使い魔/Neurok Familiar》を召喚する。だが、ここで捲れたのは《逆行/Regress》。むなしく墓地へと落ちていく。

 一方、Nicolai は《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》から《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》といういつも通りの黄金パターン。

 だが藤田もここは引けない。引くわけにはいかない。《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》を召喚し、後続さえ引き当てれば、いつでも Nicolai の本体を狙える構えを取る。
 
 そこに Nicolai の二体が襲いかかる。《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》と《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》。藤田は少し躊躇した後に、次ターン以降の展開と残りライフを踏まえた上で、《ニューロックの使い魔/Neurok Familiar》を《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》のブロックにあてた。

 Game 1 のシーンがフラッシュバックする。再びぶつかり合う二体の生物。
 そして、再び使われる《捕食者の一撃/Predator’s Strike》。
 
 またもや《ニューロックの使い魔/Neurok Familiar》の体が派手に飛び散り、藤田のライフも大きく減少する。残りライフは 11。一方、Nicolai は無傷の 20 だ。更に Nicolai は《クラーク族の兵卒/Krark-Clan Grunt》を追加する。

 未だ引きが全く噛み合わない藤田は、《骸骨の破片/Skeleton Shard》を場に出す。しかし、今必要なのはシステムカードでは無くクリーチャーだ。墓地に全くアーティファクトクリーチャーが落ちていないこの状況では、効果が薄い。

 それでも《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》で《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》を相打ちに取り、《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》ないし《クラーク族の兵卒/Krark-Clan Grunt》を《銀のマイア/Silver Myr》でブロックし続ければ…。必要なのはカードを引くまでの時間だ。

 だが、それは藤田の計算。Nicolai の目は違う物を見、その頭脳は違う絵を描いていた。一度ならず二度でもなく、三度目もまた。Nicolai は《氷の干渉器/Icy Manipulator》を建造した。藤田の顔が堪らず歪む。

 機を失うことなく、Nicolai は直ぐさま《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》をタップすると、三体をレッドゾーンに叩き込む。藤田は虎の子の《恐怖/Terror》を使用し、《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》こそ葬るものの、またダメージを受けてしまう。

 《氷の干渉器/Icy Manipulator》によって《屍賊の金切り魔/Nim Shrieker》は活動停止状態。二体のうち一体を《銀のマイア/Silver Myr》+《骸骨の破片/Skeleton Shard》で無効化したとしても、このままでは二点のクロックでライフが減り続ける。

 引け。藤田が、その背後で見る観客が、ネットを通してみる日本のファンが思いを込める。だが、見えたカードは土地。藤田のライフは、7 から 5 へ、そして 3 へ減っていく。

 幸いにして Nicolai 側にもクリーチャーは追加されていない。何か一体でもクリーチャーを引ければ、そしてそれがアーティファクトクリーチャーならば、《骸骨の破片/Skeleton Shard》というシステムを持つ藤田の再起も逆転もまだまだ可能である。

 そして藤田は引いた。《銀のマイア/Silver Myr》はサイズが物足りないが、それでもクリーチャーには違いない。頼む。なんとかこれで。

 《解体/Deconstruct
 
 Nicolai が唱えた呪文は、アーティファクトだけで無く、藤田の抵抗する意志と手段の全てをも同時に破壊した。

 《クラーク族の兵卒/Krark-Clan Grunt》と《ゴブリンの模造品/Goblin Replica》が攻撃を行う。《銀のマイア/Silver Myr》が一体をブロックすると、Nicolai は《戦闘の成長/Battlegrowth》をもう片方のクリーチャーに使用した。サイズを一点増したクリーチャーは、残った藤田のライフを全て削りきった。

 既に詰め将棋は解かれていた。対応するにも反撃するにも、藤田の引きはこのマッチでは噛み合わなさ無すぎていた。

 こうして藤田の手には、個人戦グランプリ二度、団体戦グランプリ二度、日本選手権、アジア選手権に次ぐシルバーカップが贈られる事となった。

 六度目の挑戦こそ。きっと。

Nicolai 3 - 藤田 0

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