Pro Tour Columbus Preview – Extended Format before Kamigawa

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弱冠15歳のオランダ勢、Julien Nujiten少年が新人王と世界王座のダブルタイトルを獲得するというかたちで2004シーズンが劇的なエンディングを迎えた。そして、ここオハイオ州コロンバスでのプロツアーからマジックの2005シーズンが開幕することになる。今季の開幕戦、このプロツアー・コロンバスで採用されているフォーマットはエクステンデッドで、10月に発売されたばかりの最新のセット、神河物語の参入がどのようなインパクトをもたらすかが話題の焦点だ。

ところで、10月末といえばハロウィーンの週末であり、ショッピングモールなどはオレンジ色を基調とした飾り付けで統一されている。また、数日後には4年に1度の大統領選挙を控えている時期でもあり、テレビでは選挙戦最終局面についての報道が四六時中なされている。そんな中でのプロツアー開催だ。

さて、神河物語がもたらすインパクトについてはイベント本戦を見ていただくとして、今のうちにこのプレビュー記事で神河以前の一年間のエクステンデッド・フォーマットがどんな風であったかを振り返っておこうか。

Pro Tour New Orleans 2003

ちょうど一年前、プロツアー・ニューオリンズでのエクステンデッドは「壮絶」の一語に尽きてしまう世界だった。なんせ、お互いが2~3ターンでゲームを終わらせてしまうパワーと速度を備えたデッキであるために、「ダイスロールの勝者がマッチの勝者」という現象が、そこかしこで起こってしまったのだ。

百聞より一見、具体例として、2004シーズンのMVP(Player of the Year)を掴み取ったGabriel Nassif(フランス)が大礒 正嗣(広島)を準決勝で打ち破ったときの第一試合の様子を取り上げてみよう。

Turn 1 Nassif:
《古えの墳墓/Ancient Tomb》から《発展のタリスマン/Talisman of Progress》。

Turn 1 大礒:
《リシャーダの港/Rishadan Port》。大礒のエンドテップにNassifは《タリスマン》からのBlue Manaで《渦まく知識/Brainstorm》。

Turn 2 Nassif:
《汚染された三角州/Polluted Delta》から《島/Island》をフェッチ。《タリスマン》から1 Manaをマナプールに浮かせておき、この《タリスマン》をコストに《修繕/Tinker》をプレイ、《金粉の水蓮/Gilded Lotus》をライブラリーから場に出す。この《水蓮》からのマナとさきほどの1 Manaをあわせて《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》をプレイ。ここでNassifが手札にある《マナ切り離し/Mana Severance》を公開し、大礒は投了を宣言。

…と、こんな具合で、ベスト8に進出したプレイヤーのうちの7人までもが《古えの墳墓/Ancient Tomb》や《厳かなモノリス/Grim Monolith》によるマナブーストを基盤に《修繕/Tinker》を詠唱するというデッキをプレイしていた。ここではやられ役となってしまった大礒も「Hato Beam式ターボ《激動/Upheaval》」と呼ばれる《修繕/Tinker》デッキだったのだが、さすがに2回目のアンタップステップを迎える前に対戦相手が勝利条件を満たしてしまうのでは…太刀打ちしようもない。

ちなみに、速度という意味では、藤田 剛史(大阪)の「《ぐるぐる/Twiddle》式《精神の願望/Mind’s Desire》」デッキなどは1ターンキルを果たしてしまうこともあったというほどで、冗談でもなんでもなく頻出する「ダイスロールの勝者がマッチの勝者」という現象に苦言するものたちも多かった。そんなわけだから、さすがにこの当時のフォーマットのことは「パワーカードが氾濫しすぎた不健全なもの」とマジックの開発チーム自身が総括しているようだ。

しかし、フォーマットの極端さが指摘された一方で、プロツアー・ニューオリンズというのは日本勢の活躍が非常に印象的な大会でもあった。さきほどの例で紹介した大礒 正嗣(広島)は「Hato Beam式・ターボ《激動/Upheaval》」として使いこんできた《修繕/Tinker》デッキで堂々のベスト4入賞しているし、横須賀 智裕(東京)も《等時の王笏/Isochron Scepter》を活かした《サイカトグ/Psychatog》デッキで見事に決勝ラウンドに勝ち進んでいる。ちなみに、ミラディンの注目カードであった《等時の王笏/Isochron Scepter》にエクステンデッドならではの強力なインスタントを刻印してみようという意欲作は《ドルイドの誓い/Oath of Druids》デッキを中心に少なくなかったのだが、結果がともなったのは横須賀だけである。

ほかにも、決勝ラウンド進出こそかなわなかったものの、浅原 晃(神奈川)は世界選手権ベルリン大会を席巻した「Gob-vantage」デッキに《煮えたぎる歌/Seething Song》と《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》という新たなアプローチを施してベスト16入賞。これは一年前の《アカデミーの学長/Academy Rector》式《魔の魅惑/Aluren》デッキ「アストロナイン」に続いて2大会連続での快挙だ。そして、予選最終ラウンド志岐 和政(長崎)とのルーキー直接対決に勝利して鍛冶 友浩(埼玉)も独自の調整を施した墓地活用デッキ「Angry Hermit」でベスト16に進出している。

そうそう、このイベントで優勝したRickard Osterberg(スウェ-デン)の赤青「ティンカー・スタックス」デッキが”George W. Bush”と名付けられた理由について最後に触れておこう。多くのミラディンのカードをフューチャーしたこのデッキは、高速で《修繕/Tinker》されてきた《鉄のゴーレム、ボッシュ/Bosh, Iron Golem》に《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》をまとわせて突進させるというビートダウンのパターンをもっており、この「ボッシュ」と「ブッシュ(大統領)」とをもじってJosh Bennettがつけたニックネームが定着した、というわけだった。

Grandprix Anaheim/Okayama

プロツアー・ニューオリンズの結果を受け、あまりに高速化しすぎた環境に対してDCIが楔をうちこんだ。そう、新たに6枚の禁止カードが制定されたのだ。

2004年1月1日発効の禁止カード:

  • 《古えの墳墓/Ancient Tomb》
  • 《ゴブリン徴募兵/Goblin Recruiter》
  • 《厳かなモノリス/Grim Monolith》
  • 《隠遁ドルイド/Hermit Druid》
  • 《ドルイドの誓い/Oath of Druids》
  • 《修繕/Tinker》

かくて、《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》+《マナ切り離し/Mana Severance》デッキや "George W. Bush"などの《修繕/Tinker》系デッキはキーカードそのものとマナベースを失うことになり、「Gob-vantage」もそのアドバンテージ面でのダイナモであった《ゴブリン徴募兵/Goblin Recruiter》を禁止され、「Angry Hermit」や「Oath」に至ってはデッキの存在そのものを許されなくなった。

そして、そんな中で2004シーズンのエクステンデッド・シーンは終盤戦、グランプリ・アナハイムとグランプリ・岡山を迎える。

Grandprix Anaheim Champion: Finkula

Jon Finkel(アメリカ)のデザインした《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator》とChris Pikula(アメリカ)の《翻弄する魔道士/Meddling Mage》をフューチャーした三色コントロールデッキ「フィンキュラ」をプレイしたBen Rubin(アメリカ)が優勝。しかしながら、DCIによる禁止カード制定はアナウンスが12月1日付けで、発効は1月1日からだったわけで、12月中旬に行われたアナハイムには間に合っていなかった。そう、北米では凶悪なる禁止カードの山がまだ生き延びていたわけなのだが、そこで実際にチャンピオンシップを掴み取ったデッキは「禁止カード制定以後」でもほとんどそのまま通用するようなレシピの「フィンキュラ」なのだった。おもしろいもので、最凶デッキたちのラストダンスとはならなかった。

ところで、Toby Wachterが日本のプレイヤーを相手にグランプリ岡山で 実に興味深いインタビューを行っている。質問内容は「6枚の禁止カードの制定によって果たしてこのフォーマットは健全なものとなったのだろうか? 考えを聞かせてほしい」というもので、中でも石田 格の回答が個人的にとても印象に残っている。

石田 格「結局はいたちごっこ。たしかに、12月(の禁止カード制定のアナウアンス)以前と今とを比べたなら、今のほうがマシということになるのかもしれない。けれど、環境を支配する新しいパワーデッキが現れたらその然るべきキーカードをまた禁止・・・という繰り返しだ。つまり、完璧に健全なフォーマットというのはありえない。結局のところ、ゲームのテンポが速すぎるセットである6版、テンペストブロック、ウルザブロックあたりが去るまではエクステンデッドが落ち着くことはないだろう」

実際、このエクステンデッド・フォーマットにおける禁止カードの制定はグランプリ・岡山の後もさらに続いていくことになるわけで、まさに石田の言う「いたちごっこ」はこれからも繰り返されていくことになるのだろう。

そんな石田 格はグランプリ・岡山では青黒のリアニメイト(墓地活用)デッキをプレイし、予選ラウンドを文字通りのポール・トゥ・ウィンで駆け抜け、最後の最後に志岐 和政の赤黒「Goblin Bidding」デッキにやられてしまったものの、見事な準優勝を飾っている。

Grandprix Okayama Finalist:Reanimate

また、平林 和哉(滋賀)の墓地活用型の新作「Dancing Ghoul」デッキをプレイしたプレイヤーの中から中島 主税(茨城)と平林自身が岡山でベスト8に進出している。この「Dancing Ghoul」だけでなく「リアニメイト」での石田の準優勝もあるわけだから、ここに来て、にわかに「墓地活用型コンボの復権」というのがトピックとなった。ちなみに、《納墓/Entomb》が禁止カードに指定されたことによって、かつての墓地フィーバーには終止符が打たれたと考えられていた。しかし、それでもリアニメイトは帰ってきたのだ。

さらに、広く「コンボデッキ」という意味では射場本 正巳(東京)のデザインした無限コンボデッキである「Loop Junktion」を使用した浅原 晃もグランプリ・岡山でベスト4に入賞を果たしており、ますます、禁止カード発効後の環境に適応したかたちでの新たな「速い」デッキたちが台頭してきたと言えそうだった。特に、射場本の「Loop Junktion」はまったくの新しいアーキタイプであり、一見するとファンデッキ然とした「無限ライフ」という着想をしっかりと戦えるデッキに仕上げてあることが国際的にも評価された。ちなみに、私がライター仲間から聞いた限りでは、日本勢だけでなく海外勢にも「Loop Junktion」を真剣にこのプロツアー・コロンバスに向けて調整しているものたちもいるようだ。

さらなる禁止カード

グランプリ岡山を過ぎると、そこから先は野球で言うところのストーブリーグということになる。しかしながら、プレイグラウンドの外側で、エクステンデッド・フォーマットに関する戦いは続いていた。…さらに禁止カードが追加されたのだ。

2004年9月20日発効の禁止カード:

  • 《頭蓋骨絞め/Skullclamp》
  • 《金属細工師/Metalworker》

スタンダードを圧倒的なカードパワーで席巻していた「最凶の装備品」はオンライン・エクステンデッドにおいても破滅的なシナジーの兆候を見せていたとのことで、これはもう時流ともいうべき禁止カード制定だったかもしれない。そして、「クランプ」と一緒に失われてしまったのが「茶単」系のマナブーストの生き残りであった《金属細工師/Metalworker》だ。こちらは駄目押しというやつだろうか。

どうやら、こういったストーブリーグでの禁止カードを見る限りでは、グランプリ・アナハイムとグランプリ・岡山で活躍したデッキたちの多くが、このプロツアー・コロンバスでの候補ないし仮想敵としてそのまま生き残っていると言えそうだ。あとは、神河物語の中からどのようなサプライズが飛び出してくるかということになるだろう。

その、新しいセットのカードのポテンシャルという意味では、オデッセイが最新セットとして参入したプロツアー・ニューオリンズ2001のときのことをご紹介しておきたい。当時、プロツアーが開催される前の段階で、オデッセイの最注目構築用カードと呼ばれていたのは間違いなく《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator》だった。しかしながら《直観/Intuition》との驚異的なシナジーを織りなす一枚の緑のカードに気がついたTomi Walamies(フィンランド)は調整中だった青白コントロールデッキにその《獣群の呼び声/Call of the Herd》をタッチするという大胆な作戦を講じ、それがプロツアー準優勝という快挙へと彼を導いてくれた。つまり、一般的とは言い難いアプローチで、意外なカードが輝きを見せてくれることもある、ということだ。はたして、神河物語にも《獣群の呼び声/Call of the Herd》たるカードが眠っているかどうか、是非とも注目して見ていきたいものである。

Pro Tour Winning Decks Winner
2003 New Orleans Tinker "George W. Bush" Rickard Osterberg
2002 Houston YMG-style Oath of Druids Justin Gary
2001 New Orleans Illusion/Donate "Trix" Kai Budde

最後に、ここで過去三年間のエクステンデッド・プロツアーのチャンピオンを挙げてみよう。昨年が「Tinker」でOsterberg、その前が「Oath」でGary、さらに一年前が「Trix」でBudde。そう、優勝を飾ったのは…どれもこれも後に禁止カードを生み出すことになるデッキたちだったのだ。

そんなわけだから、この際「どれだけ壊れたデッキが誕生するか」というところに期待するくらいのつもりで観戦していただくと良いのではないだろうか。

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