Article : Standard Deck Breakdown ~日本勢の選択から見たスタンダード~

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Article : Standard Deck Breakdown ~日本勢の選択から見たスタンダード~
By Yukio Kozakai

このプロツアー京都は、”コンフラックス”入りのスタンダードで行われる、初めてのプレミアイベントだ。もっともプレイ人口が多いとされるフォーマットだけに、プレイヤーから注がれる視線は熱いものがある。

特に、「日本製スタンダードデッキ」の精度と注目度の高さは折り紙つきとも言えるほどで、日本の、特に関東地方のいわゆる「草の根トーナメント」のデッキリストを、海外勢がそのままプロツアーやグランプリに持ち込むという話は、今や当たり前という状況だ。

本稿では、71名参戦し、そのうち2日目へと進出した37名の日本人プレイヤーのデッキにスポットライトを当て、分布、キーカード、スタンダードラウンドの全成績など、あらゆる角度から迫ってみようと思う。そのテクニックは、今この瞬間からでも使えるのだ。

前日(28日(土))にプロツアー会場で開催されていた、ホノルルの次のプロツアー、オースティンの予選フォーマットはスタンダードであり、今後ますますスタンダードの需要は高まってくる。今すぐ使ってみたいプレイヤーも、メタゲームの先の先を見つけ出したいプレイヤーも、要チェックだ!

■Breakdown

デッキタイプ 使用数 勝率
赤白ヒバリ 11 59.5%
フェアリー 7 55.3%
白単キスキン 4 55.4%
黒緑エルフ 3 80.6%
白(+赤)キスキン 4 68.8%
スワン 3 54.2%
テゼレッター 1 25.0%
赤(+黒)バーン 1 75.0%
黒緑ビートダウン 1 50.0%
ユグドラシル 1 62.5%
ドラン 1 12.5%
合計 37 59.0

まずは、デッキタイプごとの使用数と勝率を割り出してみた。2日目まで残った日本勢の勝率は、約6割。サンプル数としては少ないので、今回の勝率から純粋に信憑性を求めるのは難しいかもしれないが、1番人気の赤白ヒバリの勝率も約6割である。もっとも多い使用数であるデッキからはじき出された数字は、それなりの意味を持つ。

すなわち「6割」という数字をどう見るか、なのだが、マジックにおいて「6割勝てる」デッキはそう多くない。赤白ヒバリが「現時点での」メタゲームの勝者である理由を、数字が雄弁に語っている。

  名前 スタンダードラウンド成績   合計 使用デッキ 最終順位
    Day1 Day2      
1 Nagaoka Takayuki 12 10 22 黒緑エルフ 36
1 Yamamoto Akimasa 12 10 22 赤白ヒバリ 3
3 Kishimoto Yuuichi 12 9 21 赤白ヒバリ 17
4 Yasooka Shota 12 6 18 フェアリー 12
4 Honnami Tomoyuki 9 9 18 黒緑エルフ 113
4 Komuro Shuu 12 6 18 白単キスキン 46
4 Fujimoto Taichi 12 6 18 黒緑エルフ 30
4 Kai Tsubasa 9 9 18 白(+赤)キスキン 53
4 Tanahashi Masayasu 9 9 18 フェアリー 8
4 Nakano Yoshitaka 12 6 18 白(+赤)キスキン 38
4 Takeda Hiroki 9 9 18 赤(+黒)バーン 95
4 Nakamura Hajime 9 9 18 白単キスキン 21
4 Saito Tomoharu 9 9 18 赤白ヒバリ 25
14 Yukuhiro Ken 6 9 15 ユグドラシル 70
14 Nakamura Shuuhei 9 6 15 スワン 20
14 Murata Daisuke 12 3 15 赤白ヒバリ 124
14 Muramatsu Daisuke 9 6 15 赤白ヒバリ 43
14 Morita Masahiko 9 6 15 白(+赤)キスキン 48
14 Iyanaga Jun'ya 6 9 15 フェアリー 64
14 Ishikawa Masayo 9 6 15 赤白ヒバリ 91
14 Kuroda Masashiro 6 9 15 白(+赤)キスキン 57
22 Hirabayashi Kazuya 9 3 12 フェアリー 170
22 Wakayama Shirou 9 3 12 黒緑ビートダウン 78
22 Ootsuka Koutarou 6 6 12 スワン 110
22 Mitamura Kazuya 9 3 12 スワン 42
22 Takahashi Yuuta 6 6 12 フェアリー 147
22 Kurihara Shingou 9 3 12 赤白ヒバリ 81
22 Nakajima Chikara 9 3 12 白単キスキン 85
22 Chijimi Keiichi 9 3 12 赤白ヒバリ 150
22 Kubouchi Naoki 9 3 12 赤白ヒバリ 143
31 Kitayama Masaya 6 3 9 白単キスキン 154
31 Kashiwa Tatsuya 9 0 9 赤白ヒバリ 184
31 Ikeshita Tooru 9 0 9 フェアリー 175
31 Ishii Taisuke 6 3 9 フェアリー 160
35 Itou Atsushi 3 3 6 テゼレッター 169
35 Houwa Osamu 6 0 6 赤白ヒバリ 166
37 Shiota Yuuma 3 0 3 ドラン 14

次に、スタンダードラウンドの戦績表をご紹介しよう。ジグザグフォーマットの場合、構築と限定の個々の戦績が不透明な場合が多い。そこで、データの抽出を行ったところ、上記のような結果となった。

総合力を問われるジグザグフォーマットの場合、リミテッドの成績によって総合順位が大きく入れ替わるが、今回のプロツアー京都の場合、いわゆる「ローグデッキ」が極端に少なく、分布が集中している。わかりやすく言えば、多数票が特定のデッキに集まったトーナメントに限っては、どのラインでマッチアップしたと考えても、対戦するデッキタイプに大差は無いと考えられる。実際、赤白ヒバリやフェアリーといった人気所のアーキタイプは、上位のみならず下位にも数多く見受けられる。

また、抜群の成績を残したデッキや、特徴的なリストを次項よりピックアップしている。それを踏まえたうえで、カード構成、戦績など、あらゆる視点から分析してみて欲しい。

●赤白ヒバリ(GAPPO)

デッキパワー、安定感ともに、現環境No.1と言っても良いだろう。プロツアー本戦では、2名のプレイヤーを日曜日へと送り込んでいる。

デッキ全体がアドバンテージの塊であり、立ち上がりの緩やかさを、《精神石/Mind Stone》《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》《流刑への道/Path to Exile》がカバーし、《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》が後続(主に《運命の大立者/Figure of Destiny》)を補給。5マナ並んだら、ショータイムの始まりだ。




紹介するのは、プレーオフへと進出した山本 明聖(和歌山)のレシピだ。比較的オーソドックスな構成だが、メインに2枚仕込んである《神の怒り/Wrath of God》が光る。同系が多い事を読み切った上で、赤白相手なら「超展開しても大丈夫」と過信した無警戒の相手に怒りの鉄槌を振りかざして勝ち上がってきた。

デッキパワー、練り込み共に、さすがはプロツアーサンデーに残るだけのレシピである。

●フェアリー

一口に「フェアリー」と言っても、いくつか種類がある。もっともスタンダードなのは、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を組み込んでカードアドバンテージを得ながら戦うタイプ。

もう1つは、除去に特化して《苦悶のねじれ/Agony Warp》《恐怖/Terror》に《コショウ煙/Peppersmoke》もメイン投入というもの。《コショウ煙/Peppersmoke》は同系ミラーや赤白の序盤を食い止めることと、キャントリップとしての仕事も期待されており、前出の《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》よりもこちらを好むプレイヤーも少なくない。

また、最近では不屈のストイシズムこと、高橋 優太(東京)が構築したフェアリーが、関東では注目されていた。メインは普通のフェアリー。しかし、サイドからは《残忍なレッドキャップ/Murderous Redcap》《叫び大口/Shriekmaw》などをフル投入し、さらに《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》で再利用という形にシェイプチェンジする。フェアリー対策にありがちな飛行クリーチャー狙いのカードを逆手にとって、ほぼ黒のビートダウンとして成立するタイプだ。

プロツアーサンデーへ進出した棚橋 雅康(新潟)も、この流れを組んだフェアリーを使用している。




●白単キスキン

上位人気、特に赤白を標的にしたのが、惜しくも最終戦で破れ、プレーオフ進出を逃した中村 肇(東京)が組み上げて調整を施した白単キスキンである。地元大会である「PWC」で好感触を得ていたところ、中島 主税(神奈川)、北山 雅也(神奈川)、小室 修(東京)らにそのレシピを提供するに至り、さらに磨きをかけてプロツアーへと持ち込んできた。

デッキの中で光るのは、メインボードの《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》。同系も赤白も、既戦力を飛ばして勝ったり、《栄光の頌歌/Glorious Anthem》のバックアップの下、トークンを生み出し続けて息切れせずに戦い続けるなど、その効果は高かったという。

データからもお分かりかと思うが、2日目に残った日本人の白単キスキンは、全て中村謹製のものである。お見事。




●白(+赤)キスキン

赤白ヒバリに向かわず、あえてキスキンで構築し、サイドボードから赤のカードをスプラッシュする戦術を取り入れたのが、白(+赤)キスキンだ。

重鎮、藤田 剛史(大阪)製のデッキを持ち込んだのは、関西勢の黒田 正城(大阪)、中野 圭貴(大阪)、森田 雅彦(大阪)。サイドボードに《モグの狂信者/Mogg Fanatic》を取り、 赤白とフェアリーをケアした構成を取っている。また、甲斐 翼(福岡)のバージョンでは、《無秩序の点火/Ignite Disorder》を採用しており、より、対赤白を意識した構築を施している。

基本はキスキンなので、立ち上がりのスピードを維持しつつ《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》からねじ伏せる展開力を生かし、白単ではなかなか難しい「かゆい所に手が届く」カードをベンチに置くことで対応力を高めた格好だ。




●黒緑ビートダウン(エルフ)

結果的に、スタンダードの勝ち組となったのは黒緑だった。プロツアー自体は、日曜日に黒緑エルフは勝ち上がっていないのだが、絶対数から考えるとかなりのパフォーマンスである。

エルフがビートダウンの代名詞として君臨していたのも久しく感じる今日この頃。いまや、赤白ヒバリやキスキンにその座は明け渡してはいるものの、「数を並べる」という点での不利は、サイズの重厚さと《不敬の命令/Profane Command》による一発で帳消しにしている。

黒緑エルフというと、《傲慢な完全者/Imperious Perfect》《狼骨のシャーマン/Wolf-Skull Shaman》などのシステムクリーチャー兼小型アタッカーを中心にしたデッキを思い浮かべるが、赤白対策で多く取られる《蔓延/Infest》《火山の流弾/Volcanic Fallout》をかわすべく、《萎れ葉のしもべ/Wilt-Leaf Liege》《雲打ち/Cloudthresher》などを早いターンに展開して押し込む戦術を取る。

また、《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》でブロッカーを突き破る形もあり、もはやエルフという総称はあてはまらず、ブーストエンジンとして「エルフを利用した」黒緑ビートダウン。これが正しい表現になりつつある。

メタゲームのスキを突くという意味で、とても理にかなっている構成だ。




●スワン

プロツアーが近づくにつれて、関東ではメタゲームに大きな動きがあった。毎週末行われる草の根大会で、三田村 和弥(千葉)、中村 修平(大阪)、渡辺 雄也(神奈川)といったプロツアー京都の本戦参加者が調整のために次々とスワンを持ち込み、好成績を残していったのだ。

もともと、昨年の日本選手権で栗原 伸豪(東京)が決勝ラウンドに進出しているようにデッキとしてのポテンシャルは高かった。しかし、押し引きの判断が難しいことや、扱うプレイヤーに要求されるプレイング技術の高さから、赤白のように単純なアプローチで勝利を求めるデッキが好まれていった中で、忘れられたデッキとなっていた。

しかし、警戒の薄い相手に突き刺さる《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》と《突撃の地鳴り/Seismic Assault》。カウンターのバックアップと《紅蓮地獄/Pyroclasm》《火炎弾/Flameshot》などの全体除去を駆使してスワンのフィールドに相手を引きずり込み、緩やかに、時に一気の勝利を目指す。

その賞味期限は決して長くは無いが、プレイヤーの脳裏から消えかけた頃、白鳥は舞い降りる。




●その他のデッキ

初日の記事でも触れられていたが、高橋 純也(神奈川)のチューニングによるテゼレット。通称「青白GAPPO」は、残念ながら結果を残すことは出来なかった。しかし、高橋の構築するデッキはいつもアイデアに満ち溢れている。また、エスパー系のアーティファクトデッキは、各地のトーナメントでも散見されている。可能性は少なくないので、再び大きなうねりとなる事に期待したい。




不遇と言われる、赤単系ビートダウン。《荒廃稲妻/Blightning》によるアドバンテージとダメージを生かして押し切る赤単系デッキは、赤白が生み出す膨大なアドバンテージの波を生き抜くことは出来なかった。しかし、長島 誠(山梨)と並んで山梨の2枚看板と目される、「山梨王」こと武田 浩樹(山梨)のアプローチが、1つの回答になるかもしれない。

《ゴブリンの異国者/Goblin Outlander》によるプロテクション(白)。4枚フル投入された《苦悩火/Banefire》。メインボードから、デッキの象徴ともされた《荒廃稲妻/Blightning》を廃することで、よりシンプルな勝利への筋道を立てた構築は、今回のプロツアーでは非常にマッチしていた。赤を選択してのスタンダードラウンド6勝は伊達ではない。

シンプル、イズ、ベスト。「勝てるデッキ」に必要不可欠な要素だ。



Takeda Hiroki
PT Kyoto 2009


その他、プロツアーサンデーにBrian Robinson(アメリカ)を送り込んだドランや、清水 直樹(東京)が構築し、世に広めた青白緑《ミストメドウの魔女/Mistmeadow Witch》コントロールであるユグドラシル。日本勢では使い手がいなかったが、新たな”Juggernaut”と目される、Luis Scotto-Vargas(アメリカ)操る白黒トークンなど、ここで紹介し切れなかったデッキがまだまだたくさんある。

2日目に進出した日本人が使用した37の全てのデッキを別にご用意したので、至高のレシピをぜひともご堪能あれ。

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